計画的殺人の全容を克明に記録したドキュメンタリー映画!
原作は小説です。
今回おすすめしたいのは「君は月夜に光り輝く」です。
2019年公開日本映画。
監督は月川翔。
出演者は永野芽郁(ながのめい):渡良瀬まみず役
北村匠海(きたむらたくみ):岡田卓也役
本作は「難病恋愛もの」です。
5000億年くらい前から人気の定番ジャンルです。かくいう管理人も大好物です。
高校二年生の主人公「卓也」は、不治の病におかされ病院から出られない同い年のヒロイン「まみず」(当然美少女)とうっかり出会い、それから数々のイベントを通じて心の交流を深めていくうちに彼女を愛するようになるものの、結局ヒロインが死ぬ未来は変わらない、という悲恋の話です。
死の未来が決まっているからこそ、恋の炎が燃えあがる、悲劇の物語……。
ぐっすん確定。
――などということにしたがっている勢力が多いでしょう。
ちがいます、ちがいます!
騙されてはいけません!!!
この映画はそんな甘っちょろいシロモノじゃありません。ふつうの難病ものとはちがうんです!
管理人の個人的分類ですけど、ふつうの難病ものの有名どころをあげます。
「世界の中心で愛を叫ぶ」「君の膵臓を食べたい」「8年越しの花嫁 奇跡の実話」「風立ちぬ」などがあります。だいたいヒットしてます。
難病ものがヒットしない社会は間違っている、ということでしょう。
男子側が不治の病におかされるという逆パターンバージョンはあんまり知りません。
「恋空」なんかはそんな感じだったような気がするのですが、記憶からほぼ消えているので、難病がテーマではなかったのでしょう。麻薬とかレイプとか絡んだクライムムービーだったような……。
えーとなんかーオラオラ系の高校生男子が心臓病でーみたいな映画を鑑賞しかけたことはありましたが、開幕10分でつまんなすぎて限界を迎えたのでタイトルすら覚えてません。ごめーん!
管理人は男子なので、病弱男子系はセンサーに引っかからなかった、ということでご容赦ください!
たぶん女子向けの難病ものもいっぱいあります!知らんが。そこは勝手に探して、どうぞ!
難病ものは古今東西を問わず涙腺崩壊マシーンとしてたびたび作られてきました。
難病に限らず、悲恋をテーマにした作品は紀元前から人気コンテンツだったようです。
相思相愛の男女を引き裂くレシピ。
それは古くから「戦争」「病」「身分の格差」でありました。
その全部を詰め込んだ映画が1950年代の日本映画にあって、一回だけ観たことがあります。
いいとこに生まれた御曹司が近所の村娘と恋に落ちて将来を近いあうものの、身分格差のせいで相思相愛の二人は引き離されます。
ですが、御曹司は地位も財産もかなぐり捨てて恋人と駆け落ち。めでたしめでたしかと思いきや、そのタイミングで戦争勃発。いわゆる第二次世界大戦です。
赤紙(召集令状)を受け取った御曹司は新婚の妻を残して戦地にいきました。
大日本帝国において名家の子弟には赤紙はこないはずなのですが(死地に送られるのはいつも貧乏人なのさ……)、跡継ぎの座を投げうって駆け落ちしたので、保護から外れていたのです。
そして、むごい戦場から帰ってきた御曹司が目にしたのは結核で瀕死になっていた若き妻の姿でした……。
悲恋要素全部もりの映画でした。たしか白黒映画だったと思うのですが、タイトルとかぜんぜん覚えてません。
古きよき日本映画に詳しいひと、特定オナシャス!
――ネタバレ注意!――
死神度☆☆☆☆☆
主人公の卓也くんは、ヒロインのまみずちゃんと病室で出会います。
高校二年の新学期がはじまったタイミングでクラスメートに押し付けられる形で、クラス代表としてお見舞いに行くことなったという経緯があります。
一年生のときから欠席続きだったらしいので、面識はありません。
まったくの初対面です。
かわいいパジャマ姿のまみずちゃんと初対面を果たした卓也くんは、ひとめぼれしてしまいます。
それから彼女の病室をたびたび訪れることになるのです。
まみずちゃんは「発光病」という不治の病におかされていて、本人いわく「余命ゼロ」らしいです。
一年前に余命一年と宣告されたので、本来ならもう死んでるはず、と。
病院から出られないまみずちゃんのために、卓也くんは彼女の「死ぬまでにやりたいこと」リストを代行することを引き受けます。
・ジェットコースターに乗りたい。
・食べきれないほどの山盛りパフェを食べたい。
・最新スマホのために徹夜行列したい。
ぜんぶやってあげます。
しかも、このくだりで卓也くんはバイトを始めているので、たぶんこの費用は自分持ち。
え?
パシリ?
はい、そうです。
病室から出られないまみずちゃんに経費を要求するなんて、主人公のやることじゃねえよな~?
惚れた女のためにならなんでもやる、古き良き男子ですね~。
ですが悲恋ものには障害がつきもの。必ず咎められるものです。
まみずちゃんのお母さんに「娘に関わらないで」と釘を刺される、というか、NG出されます。
けっこう早い段階にです。
よくある難病ものなら主人公は親御さんに気をつかってあっさり引くものですが、卓也くんはキチ……じゃなくて前しか見ない男なので、ガン無視です。これには視聴者(ていうか私)ドン引きです。
こいつ、アホとちゃうんか?とマジで思いました。
なぜなら、お母さんは「娘と関わらないでほしい」理由をちゃんと説明したからです。
どうやら発光病は、嬉しさとか喜びとかそういう感情の動きがある――つまり感動してしまうと、病状が悪化するらしいのです。
出会ったときに「わたし、余命ゼロなんだよね」とまみずちゃんが発言するのですが、それでも生きている理由はたぶん病室に閉じこめられて一切の感動もなく生きてきたからでしょう。
それを知ってもなお、卓也くんは引きません。どんどんまみずちゃんを喜ばせにかかります。
たとえば、何万円もしそうな高級ブランドの靴をプレゼントします。サマンサタバサです。まみずちゃん大喜びです。
スーパームーンがくるとテレビで知ったら、友人に天体望遠鏡を借りて、わざわざ夜の病院に忍び込んで、外出できないまみずちゃんを屋上に連れ出して天体観測させてあげます。
まみずちゃん大喜びです。
でも望遠鏡はたいして見ません。あんま興味ないし。
で、二人でいちゃつきます。キスとかしなきゃいけないので、空を見てる暇なんてないんだよね!!!
やばいでしょ……これ……。
卓也くんが「感動すると死ぬ」という設定を知らなければ、純粋な善意と純粋な好意にもとづく行動なんですけど、わりと早い段階でまみずちゃんのお母さんから聞いて知っています。
これは、完全に殺りにいってるな、と思わざるを得ません。
案の定、キスの直後に発光病の発作が起きて、まみずちゃんは緊急治療室行きです。
さすがに命の危険を感じたまみずちゃん、卓也くんに「もう会いに来ないで……」とお願いします。
まあ、そりゃそーだよね……。
完全に殺しにかかってるからね。
ほんでも、死にたいやつを死なせてあげる、それは不正義なのでしょうか?
議論の余地ありですね。
一生難病もののヒロインに振り回されればいいと思う度☆☆☆☆☆
完全にやべーやつである岡田卓也くんを演じるのは北村匠海さん。
なんか見たことあるなーと思っていたのですが、北村さんは「君の膵臓を食べたい」でも不治の病をかかえたヒロインと恋仲になる主人公役を演じていらっしゃいました。これも名作なんで、おすすめです!
わかります。北村さんは納得感がすごいからです。
整った容姿ではあるが派手な感じはない、つーか、嫌みがない。
どこか冴えない感じがあり、素朴で、優しそうで、一対一で向き合うならこの人、という真摯なオーラが出ています。
もし、かわいい我が娘が最後に恋をするとすれば、この男子しかいないでしょ。と思わざるを得ない。
短い期間で難病ものに二回も出るっていうのは、俳優としてのキャリア的には微妙かもしれません。
なーんて思っちゃうのはちょっとね、素人すぎんだよね。
わたしは北村さんには毎年難病ものに出てもらって、旬な女優と永遠に純愛してもらいたいです。
「もっとも長く学生服を着て、ヒロインを看取った死神俳優」として、ギネス記録になってもらいたいぐらいです。
ガチでそう思ってます!
でも、やっぱ殺人じゃね?度☆☆☆☆☆
ヒロインは不治の病「発光病」におかされています。
その病は原因不明で、治療法もわかっていませんが、とにかく大人になるまえに必ず死ぬ、という絶対性を有しています。
現状わかっていることは、喜怒哀楽、つまりマイナスにせよプラスにせよ感情が動くと体が発光していずれ死に至るということだけです。
この奇病、どうやらそれほど珍しい病気ではないようです。
主人公の友人の兄も発光病で亡くなったそうなので。
ここまでお読みくださったかたならもうおわかりでしょう。
卓也くんは、出会ってからすぐ全力でまみずちゃんを喜ばしにかかります。
狭い病室に閉じ込められて、寂しい思いをしていたまみずちゃんは、彼と出会うまで「生まれてこなければよかった」と思っていたのです。
なんて悲しいことでしょう……。
出会った直後「死ぬまでにやりたいこと」リストを代行してもらったのも、生への執着をなくしたかったから、という悲しい理由です。
卓也くんはその無茶ぶりにすべて応えます。
なぜなら、彼は初対面のときに聞いてしまったからです。
「わたし、いつ死ねるんだろう……」
死を望んでいる女性をみるのは初めてではありません。
じつは、卓也くんには姉がいて、そのひとは数年前に車道に飛び込んで自殺しています。
え?なんで?
この世界では愛するものを失ったら、自殺しなきゃいけないというルールがあるからです。
え?なんで?
おそらく全身の皮膚から光を放ち死んでいく「発光病」という病がかなり蔓延している影響なのでしょう。
前述のとおり、「発光病」は感動すると病状が進行する病です。
卓也くんは、全力でまみずちゃんを喜ばせていきます。その姿勢は最後の最期までかわりません。
なんでかっていうと、それがまみずちゃんの望みだと思っていたからです。
ですが、死に瀕したまみずちゃんは「生きたい」と告白します。さらに卓也くんにあるお願いをします。
というわけで2人は相思相愛のキスをします。きゃー!
そして、感情が高ぶったまみずちゃんは最後の輝きを放って無くなります。
いや、「無く」なったって、誤字じゃないですよ。
「まみずは14日間輝き続けたあと、消えた」
って卓也くんがナレーションしてましたから。
トドメをさした卓也くんが。
あれ、これほぼ殺人じゃね?
ん?……傷害致死?
ま、まあともかく。
この物語の本質はそんな些細なポイントにはありません!ないのです!
「生まれてこなければよかった」
と絶望のなか狭い病室に閉じこめられていた少女は、ある男の子との出会いで世界観を変えられるのです。
もっと生きたい、彼ともっといっしょにいたい。
皮肉にもそういう感情の動きが少女の余命を奪うことになりました。
しかし、彼女に後悔はなかったでしょう。
まみずが最後の最期に卓也に託した代行。それはいったいなんだったのでしょう?
どうぞ、ご自分の目でご覧ください!
わたしはこの映画が好きです。