お抹茶のごとく、苦み走った地味映画。
2018年日本映画。ジャンルはお茶映画となっております。
監督は大森立嗣。
主演は黒木華。人生に迷う女性を演じさせたら右に出る者なしの女優です。
というわけで、主人公の女性が人生に迷いながら茶道とともに歩む10年以上を描いた作品となっております。
・序盤のかんたんなあらすじ
大学生の典子(黒木華)は、熱中しているものも将来やりたいこともありません。不器用で優柔不断な性格です。
なんとなく母親の奨めでいとこの美智子(多部未華子)とともに武田先生(樹木希林)から茶道を習うことになります。
不器用なので最初は所作や作法が覚えられず、注意されてばかりです。またその所作にどんな意味があるのか質問すると「頭で考えちゃダメ。習うより慣れろっていうでしょ」と返されてしまいました。
ブルース・リーかな?
ようするに伝統的にそうなっているだけで、とくに合理的な意味はないようです。
続けるうちに典子も上達していきます。
熱中というほどハマっているわけではありませんが、性に合っていたのでしょう、何年も続けることになりました。
典子と美智子は対照的な性格です。活動的で決断のはやい美智子に比べて、典子は優柔不断で不器用。
大学卒業を迎えて美智子は商社に就職しましたが、典子は出版社でアルバイトです。進路が決められなかったのです。
美智子がどんどん先に進んでいくのを後ろから見送ることに典子はコンプレックスを抱いています。
ですが、典子のコンプレックスは美智子だけではなくなりました。お茶の世界でもそうなってしまうのです
茶道を長く続けるうちに後輩たちができます。最初はみんなかつての典子と同じく失敗しますが、やがて追い越していくのです。
迷い続ける典子は茶道とともに歩んでいくのでした。
――ネタバレ注意!――
黒木華的迷走度☆☆★★★
典子は言うほど迷ってないような……。
出版にかかわりたいという願望を持ちつづけ、就職活動では失敗しましたが、アルバイトを経てフリーライターとして活動するようになります。
一貫しとりますね。
なんとなく始めたお茶も結局10年以上続いています。
一貫性の塊やないかーい!
2019年のテレビドラマ「凪のお暇」で演じた凪のほうがよっぽどふらふらしてました。
典子の場合、内面は迷ってばかりですが、行動はあまりブレません。
もしかしたら、迷ってばかり、という思いこみが強い典子はお茶を続けることで自己肯定していったのかもしれません。
茶道の作法謎すぎ度☆☆☆☆☆
袱紗(ふくさ)=ハンカチ。
茶室に入るときは左足から。
お茶会では先にお茶菓子を食べてからお抹茶をいただく。
お抹茶を飲むときは最後に音を立ててすする。
夏と冬で作法が変わる。
茶道の関係者は「まあまあ」を連発する。
などなど、茶道の知識が乏しいわたしには勉強になることが多かったです。茶道をやっているひとなら、あるあるネタとして楽しめるんですかね?
ちなみにお茶菓子を食べてからお抹茶をいただくのは、口のなかが甘いほうがお抹茶の渋みをより深く味わえるからだと思います。
思います……?
はいそうです!ただの予想でした。が、いまググったら正解のようです。豆知識に加えてだいじょうぶです!
なお、食べきれなかったお茶菓子は懐紙に包んで持ち帰るのがマナーのようです。ごましお程度に覚えておきましょう。
まずいもの持って帰るってバツゲームっすね~どうせ捨てるのに!
しかしそれが伝統……「まあまあ」の精神です。
音をたててすする、という一見して不作法なルールの謎の答えはかんたんです。
お茶会では参加者がひとつの茶器で回し飲みするので、ちゃんとぜんぶ飲んだよ!という清潔感アピールでしょう。
地味度☆☆☆☆☆
地味です。ほんとうに地味です。
人間は毎年同じようなことを繰り返しているけれども、じつはその日々に完全なコピーはないのです。
作法でガチガチに縛られて毎回同じようなことをやっているように見える茶会でも、じつは「同じような」であって、よくみると毎回変化しているのです。
誰だって年をとるし、季節は日々変わる。
一度として完璧に同じ回はありません。
日日是好日――このようわからんタイトルが伝えたいのは「一期一会の今を楽しめ!」ということだと思いました!
まあ、あんまりおもしろくなかったですけど……(!)。