『ものがたりいちば』

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映画「羊と鋼の森」の感想

成長もの、というよりも、先輩もの。

 

2018年日本映画。表向きのジャンルは職業ものとなっております。
監督はTVドラマ「鈴木先生」などの演出を手掛けた橋本光二郎
主演は「キングダム」などの山崎賢人

 

ピアノの調律師という珍しい職業をフィーチャーしています。
タイトルの『羊』はピアノのハンマーに使われるフェルトの素材で、鋼はピアノ線の素材です。


森はそれらが張り巡らされたピアノの比喩でしょうか。
主人公も山育ちで幼少期から森で過ごしてきたというダブルミーニングかもしれません。


主演の山崎賢人が演じる新人調律師の外山が失敗を繰り返しながら成長していくお話です。
若者が苦しみながら成長していく話が好きなひとにはおすすめできます。


山崎賢人上白石萌音という人気若手俳優が出演していますが、恋愛要素は一切ありません。
とても硬派な映画です。恋愛要素が好きなひとにはおすすめできません。


ネタバレの影響はほぼないでしょう。

 

 

・序盤のかんたんなあらすじ
新人調律師の外山は、専門学校を卒業後、地元の田舎町に戻り、楽器店に就職しました。


当初は先輩の柳に助手としてついて回っていますが、先輩たちから教えを請い、また実地経験を重ねていくうちに柳からひとりで調律するようにと言われます。


ひとり立ちした外山が担当することになった顧客のなかに、ある高校生姉妹のピアノがありました。
仲の良い姉妹なのですが、性格は異なります。


姉はおとなしくて繊細、妹は明るくて活発。
ピアノの演奏も同様です。


妹は奔放でピアノの練習をやりたくないときにはやらないのに、コンテストではいつもいい演奏をして結果を出します。


そんな妹に対して姉はコンプレックスを抱いているのです。
自分にも優秀な弟がいて昔からコンプレックスを感じていた外山は、姉妹のことを気にするようになり、とくに姉の調律には気合を入れて臨むのでした。


しかし、この姿勢がのちに問題なってしまいます。
なぜなら、ピアノは姉妹がふたりで使っているものなのです。


似たようなコンプレックスを持つ姉に同情するあまり、妹も弾くものだという意識がすっかり抜け落ちていたのです。
外山は調律師失格だと自分を責めます。


外山や姉妹は、どのように成長していくのでしょうか?

 

 

――ネタバレ注意!――

 

 

 

先輩キャラ揃いすぎ度☆☆☆☆☆
外山には3人の先輩がいます。


もともと外山が調律師を目指すきっかけになった板鳥は理想の調律師。
つまり憧れのひとです。
海外の一流ピアニストからご指名が入るほど大物調律師です。
師匠枠です。


元ピアニストの秋野は不愛想でなかなか認めてくれませんが、腕は確かです。
越えるべき壁枠です。


直接の指導役である柳は自信がなく迷いがちの富山をいつも励ましてくれる頼れる先輩です。
兄貴分枠です。


とくに柳は失敗したときや落ち込んでいるときに必ず助けてくれるいいひとです。
嫌な先輩に悩まされているひとは、理想の先輩たちに癒されましょう。

 

 

確かに思い上がってるよな度☆☆☆☆☆
物語の後半で妹がピアノを弾けなくなるのですが、外山は自分が姉用にばかりピアノを調律しつづけたことが原因だと自分を責めます。


ひとり立ちしたばかりのぺーぺーですよ?


ちょっと思い上がりも甚だしいのでは……さすがに安易に悲劇の主人公になりすぎじゃね?とか思っていたら、さすが柳先輩「思い上がってんじゃねーぞ!」と一喝。


主人公が真面目で思い込みが激しいので、上述したようなイタイ展開にしばしばなりそうになるのです。
が、諸先輩方が適切なつっこみをいれてくれるので安心できます。


姉妹とのかかわりがメインストーリーなんですが、やっぱりこの映画の見どころは頼れる先輩たちですね。


ただ先輩たちが頼れ過ぎて、外山が壁にぶち当たったとき、すべて彼らの助けでぽんぽんと乗り越えているのです。


自力で苦しみ、考え抜き、乗り越えたような描写がないので、いまいち成長感は薄いと思います。
先輩たちいなかったらどうするんでしょうか……?

 

 

豆知識増えて得した度☆☆☆☆★
恥ずかしながら管理人はピアノの知識は皆無なので、ハンマーの素材に羊の毛が使われていることを知りませんでした。
完全に木材だけだと思っておりました。


勉強になります。
軽くググったところ、ピアノは定期的に調律しないと、音が狂ってしまい、間違った音感が身についてしまう危険性があるそうです。


またピアノそのものの寿命も縮むようです。
子どもを天才ピアニストにしたい親御さんはケチらず調律してもらうとよいようです。


中盤で板鳥が一流ピアニストの調律を担当するシーンでは、ピアノそのものではなく、ピアノの脚のキャスターの角度を変えるだけでピアニストの要望どおりに音を変えるシーンがあり、それも勉強になりました。


今度ピアノのコンサートに行く機会があったら「なんでもかんでもピアノいじりゃいいってもんじゃないんだよね~」とかドヤ顔でぶっぱなしてみたいと思います!

 

 

ところで、結局、複数のひとが使うピアノってどう調律するのが正解なんですかね……?