『ものがたりいちば』

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「バハールの涙」の感想

赤く染まる母乳。

 

2018年フランス映画。戦争映画。
監督はエヴァ・ユッソン。
主演はゴルシフテ・ファラハニ。


ネタバレは影響しないでしょう。
戦争ものですがグロ描写はほぼありません。

 

 

・序盤のかんたんなあらすじ
フランス人ジャーナリストのマチルドは、ISの支配地域で戦闘を続けるクルド人部隊の取材に赴いた。


そこでバハールという指揮官と出会う。


バハールは女性兵士で、彼女の指揮する兵士も全員女性で構成されている珍しい部隊だった。


バハールはかつてISに夫を殺され、子どもを奪われ、自分自身も性奴隷として売られた経験をもっている。
部下の女性たちも多くは元性奴隷だった。


女性に殺されると天国へ行けないと信じているIS兵たちは、バハールの部隊を恐れている。


自身も戦場で夫と片目を失ったマチルドはバハールに共感を覚え、部隊に同行して取材することに決める。


バハールの部隊は、拉致されて戦闘訓練を強要されている子どもたちを救出する作戦に挑むのだった。


そのなかに、拉致されたバハールの子どもがいるのかもしれなかった……。

 

 

――ネタバレ注意!――

 

 

 

日本に住んでいると忘れがち、世界は今も戦争だらけ度☆☆☆☆☆
戦前のバハールは大学を出てフランスに留学したほどのインテリで、故郷に帰ってからは弁護士として働きつつ、夫と子どもと幸せな家庭を築いていました。


ところが、ある夜突然現れたISの兵士たちに男たちは皆殺しにされてしまいます。


ISは子どもたちを奪っていきました。
洗脳して戦闘訓練をさせたあと、兵士として使うためです。


わたしはその組織が邪悪かどうかを判定するには「子どもを戦わせている」という基準があるのかなと思います。


どんな理想や信念や主張があっても、ガキをヤク漬けにして銃持たせて戦場に送りこんだり、女さらってきて性奴隷にする組織は邪悪でいいでしょう。


スマホもってる文明人がいまだにそんなことやっているんだから、マジで信じられません。


本作は事実をモチーフにした映画ですので、実話ではありませんが、ちょっとググれば本作よりひどい話はいくらでもでてきますね。
過去の出来事ではなく、今現在も続いている悲劇なのだと肝に銘じたいものです。

 

 

全体的に暗い度☆☆☆☆☆
ストーリーのことではありません!


というか、戦争ものだから明るくハッピーなわけがありません。
画面が暗い……夜のシーンが多めなので、正直あんまり見えません。


グロそうなシーンもあるのですが、どうせ暗くて見えないので安心です(!?)。

 

 

過去回想好きじゃない度☆☆☆★★
この映画は現在のバハールの部隊行動とバハールの回想を交互に描写する形式で進んでいきます。


回想シーンは性奴隷にされたバハールがどうやって脱出したのか、という決死の脱出劇を描いているのですが、現在のバハールが元気に銃をぶっ放しているので、成功したことがわかりきっています。


わたしは映画でもドラマでも小説でもアニメでも過去回想シーンには否定派です。


じつはこんなことがあったんだよ、というどんでん返しならいいと思いますけど、その人物が生き残るかどうかみたいな回想シーンはあんまり観たくないですね。


だって、生き残るとわかりきっているんですから……。

 

そろそろ先進国が忘れかけている中東の今。


そして、ISの非道さや虐げられる女性や子どもを描きたかったという使命感を感じました!


安易なグロ描写に頼らない志の高さには共感を覚えました。
ちょっと構成は好きじゃありませんでしたけど……。