『ものがたりいちば』

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映画「来る」の感想 人気俳優を多数配しながらB級に徹し切った見事なギャグホラー!

2018年日本映画
監督:中島哲也
主演:岡田准一

 

 

 

序盤のかんたんなあらすじ


製菓メーカーに勤める田原は美しい妻とかわいい娘に恵まれ、その幸せな生活を日々ブログに書きこんでいた。
しかし、田原の勤め先の後輩が不審な死を遂げ、そのころから一家は呪いや祟りのようなものに見舞われるようになる。


困った田原は家族を守るために親友の民俗学者に紹介してもらったオカルトライター野崎を通じて、霊能力のあるキャバ嬢マコトを紹介してもらった。


マコトによると一家は「アレ」に憑かれているのだという。
アレとはなんなのか?
田原は家族を守ることができるのか!?

 

 

―――ネタバレ注意!―――

 

 

 

ホラーのフリしたオカルトギャグ度☆☆☆☆☆


人気俳優たちをよくあんなアホみたいなグロに引きずりこめたものです(笑)


前半のまだホラーのフリをしていたパートではガラスに手形の血が付いたり、不気味な電話がかかってきたりという演出が多すぎて退屈でした。
何回電話演出やんねん(笑)


しかし、コトコの知り合いのテレビ祈祷師(柴田理恵)の腕がいきなりぶっちーともがれてからは一変、ホラーのフリをやめてくれました。


それからは妻夫木聡の内臓ヌード死に始まって、終盤の祈祷師たちがつぎつぎと血ゲロ吐いて死んでいく展開もおもしろかったです。


アホみたいな死に方でいえば、わたしのいちばんのお気に入りは沖縄から呼ばれた凄腕祈祷師軍団のババアたちがトラックでまとめて轢かれて死ぬシーンです!


とにかく後半は人が死ぬのが楽しくてしょうがなかったです(笑)
きっと撮影しているスタッフや演者も楽しかったでしょうね~。


ただし、コトコの件はややがっかりしました。
コトコは前半から世界を飛び回る凄腕祈祷師オーラを漂わせつつも、手抜きのテレワークでことごとくしくじってきました(笑)


しょうがなく出張ってきた中盤以降もつねにドヤ顔とアタシ凄いオーラを崩さないこの女がどんだけアホらしく死ぬか楽しみだったのに、結局死なずじまい……。


もしかしたら最後の血液ブシャー!がコトコのものだったのかもしれないですが、あんなのじゃ気持ちよくなれません!


余談ですが、終盤にコトコが招集した助っ人祈祷師軍団が公園にセッティングした大規模なステージでの儀式なんですけど、あれが「なにかに似てるな~」と気になってました。


大規模でテンションが高いんだけど、見ていてもぜんぜんわけわからん感じ。
最初はなにに似ていると感じたのかわからなかったんですけど、途中で気づきました。
オリンピックの開会式だったんです!


民族的だったり宗教的だったりする豪華なダンスが展開されるわけわからんアレ!
東京オリンピックの演出をだれがやるかでごたついたらしいので、中島監督にやってもらえばいいと思います(笑)

 

 

前半の退屈度☆☆☆☆☆


ホラーのフリをしていたからしょうがないのかもしれませんけど、田原家のパート長すぎなんですけど!


冒頭の田原の実家での会食、結婚式と2次会、新居おめでとうのパーティ、パパ友との会合、などなど会食シーンが多すぎw
しかも1つのシーンがわりと長いという……。


とはいえ、違和感をちりばめて後の展開を示唆する演出もありました。
たとえば、最初にアレが家にきたとされるシーンです。


怖いものが窓から入ってきたのにキッチンで妻子がうずくまっているのは変です。
ふつうは玄関から外に逃げようとするか、どこかの部屋に逃げこんでドアを閉めるはずですから。


結果的に妻の自作自演だったので「そんなんわかるかーい!」と視聴者が怒り出さないようにするフェアな演出でした。


他にも娘がケガをして治療中なのにせっせとブログを更新している子育てパパとか(笑)
家の中がゴミだらけで妻は育児ノイローゼで部屋に閉じこもっているなのに「幸せ家族でーす!」とブログに嘘を書くカリスマパパの姿とか(笑)


田原が上っ面だけの嫌なやつなのはもうわかったからw


後半の展開に必要なのかもしれませんけど、もうちょっと短くならなかったんですかね……。
妻夫木が派手に下半身ぶっちぎられて死んでから、今度は黒木華の視点からまた地味な演出に戻っちゃいますし。


あれもシングルマザーの生きづらさを描いて「子どもなんかいらねー」と言わせるために必要なのかもしれませんけど、やっぱりちょっと長かったです。


「わかってないなぁ素人さんはよぉ!あれはハイテンションな後半の展開を引き立たせるためにわざとスローで地味に演出してんの!」
と言われたらそうですかーと申すしかないんですけど、退屈なもんは退屈なんだよ!

 

 

役者(とメイク)すごい度☆☆☆☆☆


あんなギャグホラーで笑わずに演技できるなんてすごいです!
というのはもちろん冗談ですけど、ライターの野崎が出てきてからしばらく岡田准一と気づきませんでした。


コトコの松たか子、マコトの小松菜奈にいたっては最後までだれだかわかりませんでした。
感想を書くにあたってインタビュー記事を読んでみたのですが、まさにそれを目指していたようで、お見事です。

 

で、結局『アレ』ってなんなの?という部分は気になりませんでした。
あんなの呪いでも祟りでもなんでもいいでしょ(笑)
説明なんかしたらせっかくのギャグホラーが台無しになるうえに、ますます長くなっちまいますから。


前半は「なにこの映画おもんな……」と鼻ホジしていましたが後半は目が釘付けにされました。
ちょっと上映時間が長すぎますけど、小手先のセリフじゃなくて映像で笑わせる、力作のギャグホラーと思います!