飲み会と濡れ場ばかりの映画の感想です(笑)
目次です。好きなところから読めます。
序盤のあらすじ
妻と子どもがありながら愛人と心中未遂を繰り返す流行作家の太宰は、新作のアイディアが浮かばずに困っています。
先輩作家の坂口安吾から「家族なんて持って守りに入ってんじゃねえ、もっと堕落しろ!」とありがたいアドバイスをいただいたので、さっそく家族を置いて伊豆にある愛人静子の屋敷に向かいました。
静子は没落した旧貴族の上流階級出身で、教養豊かな女性です。
太宰に小説のネタとして自分の日記を見せるかわりに、子種を要求します。
太宰にまるで損のない条件なので、2人はセックス三昧の日々を送りました。
静子の日記をパクったもとにして書かれた『斜陽』は雑誌連載中から話題を呼びます。
ヒットのおかげでみんなにチヤホヤされて太宰はご満悦ですが、気がかりな電報を受け取りました。
静子が妊娠したというのです。
しかしもともと日記がほしかっただけなので、完全に無視します(笑)
電報を受け取ったその日に、行きつけのバーでもうべつの女トミエを口説きました。
このようにだらしない生活を送る太宰に担当編集者の佐倉もやきもきしています。
上司に「太宰さんの文学は嫌いです」などと愚痴りますが、たぶん作品じゃなくて人格が嫌いなんだと思います(笑)
ある夜、またしても太宰が行きつけのバーでドンチャン騒ぎに興じていますが、なぜかいつもにもまして空騒ぎしております。
なぜなら妊娠したことを告げてもシカトされた静子が弟を連れて乗りこんできているからでした。
大騒ぎして気づかなかったフリをして乗り切るつもりのようです(笑)
陳腐な作戦に協力させられている佐倉が気の毒です……。
さらに、すでに太宰に恋をしているトミエがやってきてカオスになります。
事情を知らないトミエは静子と仲良くうどんをすすり始めるのですが、太宰の女たちはどうなってしまうのでしょうか?
飲み会とセックス
酔客たちが『ヴィヨンの妻』のような、なにがあっても夫に尽くす妻は現実にいるのかと議論をします。
トミエは「いると思います!」と言い、静子は「なぜ恋が悪いことだと決めつけるのか?」と論点をすり替えた主張をしました。
その小説を読んだことないんで、このへんの議論はよくわかりませんでした。
ともかく、無事に静子をシカトすることに成功した太宰はトミエとの不倫に精を出します。
まあまあしっかりセックスシーンだらけです。
二階堂ふみのファンにはうれしいサービスでしょう。
トミエはやべえ女で、太宰といっしょに死にたがっています。
太宰に恋をしたというより、心中未遂を繰り返す太宰ならいっしょに死んでくれそうだから女になった感がばりばり出ております。
斜陽のヒットを受けて文壇の大御所たちとの座談会に意気揚々と出かけて行った太宰ですが、ボロクソに言われてしまったようです。
志賀直哉などは読んでもいないそうです。
太宰先生の偉大な文学を理解しないとは、けしからん輩どもです!
※わたしにとって『人間失格』は、人生で唯一「金を返せ!」と思った小説なので、けしからんサイドの人間であることを言い添えておきます(笑)
大御所たちにボロクソに言われたので先輩の坂口さんに慰めてもらおうとするのですが、「傑作とまでは言えないよね」という慰めなのかよくわからない言葉をかけられただけでした(笑)
飲み会をしたり、セックスをしたり、血を吐いたりしているうちに時が流れ、静子が無事に出産しました。
静子の弟がやってきて、子どもに名前をつけてほしいというので、自分のペンネームから一字とって『治子』と名付けました。
ひねりがないな!
アイディア力不足は命名でも発揮されたようです(笑)
これはまずいイベントでした。
なぜなら、そのやりとりをトミエの家でやったからです。
静子をはらませて子を産ませていたことにショックを受けたトミエが「死んでやる!」と大騒ぎしました。
家族がいるのに自分を愛人にしている男が他に愛人を持っていたことでショックを受けるって、ちょっと想像力足らんのとちゃいます?
もし太宰が静子との子に会いに行ったら「死にます」とトミエが宣言したので、太宰は「お、おう、いかないよ」と言わされました(笑)
その場面に同席していた編集者の佐倉は、太宰がこの命名式をトミエにわざと見せたと思っています。
トミエに太宰と別れるようにアドバイスし、そのあとなぜか襲いかかりました(笑)
獣じゃ!
獣しかおらん!
静子の出産を知ったトミエが赤ちゃんを欲しがったのでまたセックス三昧です。
子どもを産みたいのか死にたいのか、わけわからん女です(笑)
壊れていく太宰
斜陽の単行本が大ヒットしているお祝いにま~た飲み会のシーンです。
飲み会とセックスのシーンばかりで正直観客が飽きてるので、ストーリー展開にテコ入れが入ります。
きりっとした顔の青年が現れて「ぼくは太宰さんの文学は嫌いです!」と突っかかってきます。
なんと若き三島由紀夫でした。
三島は「太宰さんは死ぬ死ぬ詐欺で読者の気を引いているだけで、作品に中身がない!」と言ってのけます。
この若造、大先生相手に本当のことを言うなんてけしからん!
実際、巷では『太宰が酒、結核、女のどれで死ぬか』という賭けが流行っているようです。
大半の人が女に賭けていました。
大正解(笑)
三島の無礼な言葉にかちんときた太宰は自分の首を絞めてみせるというパフォーマンスをしてみせます。
自分の手で首を絞めても死ねるわけがないのでほっとけばよいのですが、それだとあまりにも寒い光景になるので、しょうがなく佐倉たちが心配してるフリをしつつ止めました(笑)
売れっ子だからフォローしてもらえましたが、このパフォーマンスを売れないやつがやったら、ほんとうにほっとかれてだだ滑りするだけなのでやめましょう。
太宰にはお笑い芸人の才能はないということを示した名シーンでした。
街がお祭りムードに沸いているなか、太宰はムラムラっときて路上でトミエと熱烈なベロチューをします。
娘に見られました(笑)
妻にも見られました(笑)
「お父さんなにしてるの~?」
と娘が無邪気に場をかき乱そうとしたので、妻は「お仕事よ!」と言ってそそくさと立ち去りました。
日ごろの不摂生が祟って、太宰は医者から養生するようにきつく申し渡されます。
付き合いのある出版社としても売れっ子作家に壊れられたら大損こくので、山に軟禁して執筆に集中させようと計画しました。
家族との向き合い方を反省したのか、太宰もこれに同意したようです。
ところが、妻が「家族なんて壊していいから、傑作を書きなさい!」と急に焚きつけました。
せっかくトミエと別れて破天荒な生活をやめ、療養と執筆に集中する気になっていた太宰は、これで自分の道を突き進む決心をしてしまいます。
妻が妹の葬儀のために家を空けると、トミエを自宅に呼び出し子どもたちの世話をさせました。
あ~ついに家に上げちゃったよ……壊していいなんて言っちゃうから……。
帰宅した妻はみょうに室内が片付いていることに気づきます。
ライバルへのけん制のためにわざと自分の痕跡を残していくやつですね。
自分の不在になにが起こったか薄々は察していたところに娘が「お父さんがずっと『お仕事』してた~」と無邪気に報告してきました。
祭りのときから娘は男女の営みのことを『お仕事』と呼ぶと勘違いしているので、妻はすべてを理解して泣き崩れます。
悲嘆にくれているところ申し訳ないのですが、将来誤解されそうなので、一刻もはやく娘にお仕事の正しい意味を教えてさしあげてください!
人間失格
見事に家族をぶっ壊すことに成功した太宰は、つぎに自分をぶっ壊しにかかります。
文壇の大御所たちへの侮辱的な論評を佐倉に代筆させました。
絶対怒られるくらいクソミソに言ってます。
もうすぐ死にそうだからってヤケクソだなw
そしていよいよあの傑作、『人間失格』の執筆にとりかかりました。
すさまじい集中力で作品を書き上げた太宰は、遺書とともに書斎に残してトミエとともに消えたのです。
しばらくして太宰とトミエの死体が玉川上水で発見されました。
遺体が見つかったと聞いたときの太宰の妻の反応を知りたくて大勢の記者さんたちが詰め寄せていたのですが、妻が平然と洗濯物を干し始めたので興ざめして帰っていきました(笑)
妻が平然としていたのは、きっと希望通りになったからでしょう。
「家族を壊してもいいから『傑作』を書いて!」というのが妻の希望でしたから、きっと『人間失格』を読んで傑作だと思ったのでしょう。
なにしろ生前の太宰は妻に作品を褒められたことがなかったらしいですから、妻にとってそれまでの作品に傑作はなかったのでしょう。
「は~長年支えてがまんして、ようやく傑作書きやがったで~」
と、用済み肩の荷を下ろした気分だったのではないでしょうか。
ラストでは、死にたくない太宰がトミエに強制的に心中させられて終わります(笑)
やっぱりトミエはただ男を殺して死にたいだけの危険人物だった、というオチですね。
『太宰は女で死ぬ』に賭けた大勢のみなさん、的中おめでとうございます!!
なお払い戻しは1.0倍の元返しとなっておりますw
ボソボソ度☆☆☆☆☆
太宰がボソボソしゃべるもんだから聞き取れず、序盤は何度も巻き戻しました。
音量をあげると、今度は急に大きな声を出すからびっくりしました。
いちいち音量を上げ下げするのめんどくせーなと思いましたが、『べつに聞き取れても聞き取れなくてもどうでもいいセリフ』だからそういう音量にしてあるんだと気づいてからは聞き取る努力をやめました。
べつに問題ありませんでした(!?)
色彩鮮やか度☆☆☆☆☆
監督がフォトグラファー出身ということで、色とりどりのお花が登場し、美意識にあふれたカラフルな映像でした。
そこまで人間失格か?度☆☆☆☆☆
考えてみれば静子は一生分の恋を味わい、出版されるかどうか怪しい無名者の日記を太宰にパクってもらったおかげで自分の本も出せました。
妻は『太宰に傑作を書かせる』という人生の目的を達成し、トミエは『愛する男を殺す』というサイコパスな欲望を叶えました。
このように我らが太宰先生は3人の女たちのご希望通りに接していただけです。
女たちを利用して振り回しているように見えて、じつは太宰が女たちの都合のいいように生きていたのです。
それで最後に殺されて人生終了ですから、ノーギルティどころか被害者まであり得ます。
判決をくだす、合格!
以上です!