『ものがたりいちば』

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映画『空の青さを知る人よ』ネタバレあり、あらすじ感想

2019年日本映画
監督:長井龍雪
声の出演:吉沢亮吉岡里帆、若山詩音

 目次です。好きなところから読めます。

 

【序盤のあらすじ】

秩父に住む17歳高校2年生の相生あおいは13年前に交通事故で両親を失って以来、姉のあかねと2人で暮らしてきました。


両親が亡くなった当時高校3年生だったあかねは東京に進学する予定でしたが、それを取りやめ、卒業後地元の市役所に勤めながら幼いあおいを育ててきたのです。
そのためにバンドマンをしていた恋人の慎之介とも別れましたし、31歳の今でも独身を貫いています。


自分を犠牲にして育ててくれたあかねに感謝しつつも、もっと自分の好きなように生きてほしいと思っているあおいは卒業後は進学せずに東京に出て行くつもりです。
幼い頃、慎之介たちの演奏練習をよく見学していたあおいはその影響でベースを始め、今でも続けています。


あおいには目玉にほくろがあり、同じほくろがある慎之介とは『目玉スター1号2号』という絆がありましたが、卒業後東京に出て行った慎之介は1度も帰ってこず、あかね曰く「生きてるか死んでるかもわからない」という状態です。


後でわかりますが、これは嘘です。
あおいを育てるために慎之介と別れたことをあおいが気に病まないように、もう未練はないことをアピールするための発言ですが、実際には慎之介が東京に出たあとの動向も知っています。


ある日、学校から帰宅したあおいはいつものように楽器の練習部屋にしている近所の寺のお堂に行って、ベースの練習をしていました。
すると突然、高校生の姿の慎之介(通称しんの)が現れたのです。


驚いたあおいはお堂を飛び出し、走って家に帰り、あかねに報告しようとしましたが、言いだせませんでした。
あおいはあかねからしんのが「生死不詳」と言われていますので、しんのがすでに死んでいて幽霊として出てきたのだと思ったのです。
おそらく昔の恋人の死を姉に告げることを躊躇したのでしょう。


お堂に戻って話を聞くと、しんのは13年前あかねから「一緒に東京には行けない」と告げられた夜、そのままお堂で寝てしまい、目覚めたら13年後にいたとのことでした。
しんのはお堂から出ることができないので、呪縛霊のようです。
とりあえずあおいは、しんのの幽霊のことをあかねには秘密にしておくことにしました。


相生家の近所に住むみちんここと中村正道はあかねと幼なじみで、元慎之介のバンドメンバーでもあり、バツイチのシングルファザーのためか1人息子のツグをよく相生家に預けています。
みちんこはあかねと同じく市役所に勤めているのですが、ある日町おこしのために音楽祭のイベントを企画しました。
音楽祭の目玉としてご当地ソングでおなじみの新渡戸団吉という演歌スターにオファーを出したところ、引き受けてくれたのです。


音楽祭当日まで1週間もあるのに新渡戸がバックバンドを引き連れてやってくるというので、相生姉妹と中村親子が迎えに行くと、なんとバックバンドのギタリストが慎之介でした。
慎之介は生きていて、お堂にいるしんのは幽霊ではなく生霊だったのです!

 

【しんのと慎之介】

東京に出てミュージシャンになった慎之介がソロで成功することができず、今は新渡戸のバックバンドとして雇われていることを知ったからこそ、みちんこは新渡戸にオファーを出したのでした。


新渡戸たちが1週間も前にやってきた理由は、新渡戸自身が地域活性化に熱心であり、地元の食材や名物料理を食べ、地元住人との触れあいをして地域への理解を深めたいからです。
立派な動機ですが費用はすべて市役所持ちです(笑)


歓迎会になり市役所の職員と新渡戸たちが焼肉をつつきつつ交流を深めますが、13年ぶりの再会にもかかわらずあかねと慎之介は会話をしません。
気まずさに耐えかねたのか、慎之介は酒量が多くなってしまいます。


新渡戸たちは市役所の金で2次会のキャバクラに旅立ちます(笑)が、泥酔した慎之介をあかねがホテルまで送りました。
部屋につくと、慎之介はあかねに抱きつき「減るもんじゃあるまいしいいだろ?」と1度は言ってみたい憧れのセリフを吐きます。
あかねは「がっかりさせないで」とあっさり断って帰宅しました。


あおいは学校で大滝千佳という同学年の女子に声をかけられます。
千佳はあおいが年上の彼氏に送り迎えしてもらっていると勘違いしていて、紹介してもらうために近づいてきたのです。
こういう性格のため、後に千佳はあおいから『またゆる』という素敵なあだ名を頂戴いたしますが、怒らない度量の広さの持ち主です(笑)


あおいは車で迎えにきたあかねを見せて、千佳に現実を教えてやるのですが、なぜか千佳はこの後もあおいに付きまといます。
迎えにきたあかねですが、市役所から急遽連絡が入りました。
市役所の金での豪遊が祟ったのか、バックバンドのベーシストとドラマーが食中毒で入院してしまったのです。


誰かがが「昔慎之介のバンドでドラムを叩いていたみちんことあおいを代役に立てればいい」と冗談を言うと、新渡戸がこの『地元住民とのコラボ』というアイディアを気に入ってしまい、とんとん拍子で話が進んでしまいます。
急遽練習に参加したあおいの演奏を聞いた人たちにはおおむね好評でしたが、慎之介だけは「こっちゃプロなのにへたくそな素人とやってられるか」とプロ風を吹かせて空気を悪くしました。


あおいが屈辱に震えるなか、数人のキャバ嬢がやってきて慎之介を店に連れて行ってしまいます。
慎之介はさらに感じ悪いことに、翌日の練習をすっぽかし、しかも練習を見に来ていた千佳とどこかにしけこんでしまいました。
この件であおいは千佳に「またゆる」の称号をプレゼントしたのです(笑)


明るく真っすぐだったしんのとまったく変わってしまった慎之介に反感を覚えたあおいを、お堂にいる生霊のしんのは「おまえのベースは下手じゃない!」と後押しします。
こうしてあおいは慎之介を嫌いになり、しんのを好きになってしまったのです。

 

【空回りするあおい】

あおいは、子どもの頃かわいがってくれた慎之介が女子高生に手を出すようなクズで嫌なやつになってしまったのは、姉のあかねと別れたせいだと思いました。
そこであかねに不満をぶつけてしまいます。
ただ、言い始めると口が止まらなくなり「お姉ちゃんみたいにはなりたくない!」と思ってもいないことを言ってしまいました。


バツが悪くなったので中村家に逃げこみ、小学生のツグに慰めてもらいます(笑)
リビングで酔っぱらってだらしなく寝ているみちんこを見て、あおいは閃きます。
「そうだ、みちんことあかねをくっつければいいんだ!協力する!」


じつはこれまでお堂のしんのから「大人の慎之介とあかねをくっつけてほしい」と頼まれていたのですが、慎之介が嫌なやつになっていたことや「もし希望が叶ってしまったら、しんのが消えてしまうかもしれない」と怖くなったことで、気が変わったのです。


しかしこの申し出はみちんこに「余計なことすんな」ときっぱりお断りされました。
そもそも新渡戸を呼び、あかねのために慎之介と再会させたのはみちんこなのですから。


どうしていいかわからなくなったあおいは音楽祭の準備中に2人きりで話すあかねと慎之介を目撃します。
あんなに嫌なやつのはずの慎之介があかねを楽しそうに笑わせているのを見て「やっぱりあか姉には慎之介が似合ってるんだ」と思います。


慎之介が去ったあと、1人になったあかねはひっそりと涙を流しました。
両親が死んだときも泣かなかった姉の涙を初めて見たあおいは、あかねがまだ慎之介に未練があることを確信しました。


あおいが家で虫に刺されてムヒを探していたところ、台所の棚から古いノートが見つかります。
ノートにはお弁当や小物袋などの作り方、家事のことなどがきめ細かに記されていました。


今まであおいはあかねが「もともとなんでもこなせる人間」と思いこんでいたのですが、当時自分と同じ高校生だったあかねがあおいに不自由をさせないように必死に取り組んでいたことを知ったのです。
姉の苦労を知ったあおいは、どれだけ自分が大切にされていたか思い知ってさめざめと泣きました。

 

【山は地盤が緩い】


あおいは自分の気持ちに決着をつけるために、お堂に行ってしんのに「好きだ」と告白します。
しかし、これはべつにしんのとどうこうなるためではありません。
あかねの気持ちを尊重して、あかねと慎之介がくっつくことを祝福するためです。
そうなれば「しんのが消えてしまうかもしれない」そう思ったからこそ、気持ちを伝えて踏ん切りをつけたかったのでしょう。


戸惑うしんのがやんわりと振ろうとすると、あおいは恥ずかしくなって青春ランで逃げようとしますが「俺は追いかけられないんだから逃げるな」とごもっともなご指摘を受けて立ち止まりました(笑)


その翌日、いよいよ音楽祭本番に向けて本格的なリハーサルが行われることになります。
ところが直前になって新渡戸がお気に入りのペンダントがないと騒ぎ始めました。
いつも肌身離さずつけているので、それがないと歌えないなどとまるで芸能人気取りです(実際芸能人)。


スマホの写真で足跡を辿ったところ、古いトンネルの跡地に落としたことが判明したので、あかねが車で回収に向かいました。
あかねがトンネルに入ったとき地震が発生し、土砂崩れが起こってトンネルの入り口が埋まってしまいます。


土砂崩れの件を知ったあおいがあかねに連絡しますが、電波が通じません。
不安になったあおいはお堂に行き、しんのに助けを求めようとします。
すると、そこには先客の慎之介がいました。


土砂崩れの件を聞いてもあかねを助けに行こうとせず「音楽業界は厳しいんだよ」と今の状況とぜんぜん関係のない自分語りをする慎之介に、しんのは「将来おまえになってもいいと思わせてくれ!」と叫んで、お堂から出ようとします。
しかしそこはさすがお堂、悪霊を外には出さない鉄壁のバリアがあります(笑)


それなら、とあおいもしんのをつかんで引っ張り出そうとがんばります。
2人の腕力思いが極限まで高まったとき、ついにしんのはバリアを破って外に出られました。
ついでに慎之介のうじうじの象徴だったギターの弦が断ち切れました。


外に出たしんのはあおいの手を取るとぴょーんと大ジャンプします。
大ジャンプというか空を飛びます。
ここぞとばかりに上空から秩父の名所を紹介していきました(笑)


取り残された形の慎之介もタクシーで追いかけますが、途中で山道が閉鎖されていたので、徒歩でのろのろ追いかけます。
あっという間にトンネルについたしんのがパパっと手早くあかねを救出した頃、ようやく慎之介が追いつきました。


あかねが無事だったので、解決すべき問題は1つです。
というわけで、あおいはあかねの車に乗らず、あかね・慎之介・しんのの3人きり(?)にしてあげました。
あかねと慎之介がお互いを想いあっていることを確認したしんのは消え、強く吹いた風でそのことを悟ったあおいは「空がクソ青い」と言って泣きました。


それから3年後あかねと慎之介は結婚するのでした。
おしまい。

 

【まとめ】

秩父市予算潤沢度☆☆☆☆☆
ふつうの自治体なら1週間前乗りは断るでしょ(笑)

 

地域活性化度☆☆☆☆☆
味噌が名産なのかアピールしてましたけど、拍手したいのは秩父にもちゃんと優良なキャバクラ店があることを紹介していたことです。
なにも特産品や料理、風景ばかりを地方の売りにするべきではないのです!

 

あかね幸せになってくれてよかった度☆☆☆☆☆
ほんとうによかったです……。

以上です。