『ものがたりいちば』

映画観賞歴5000本以上なりに映画ドラマアニメの感想を書いてます。ゲーム関連はhttps://zwigani.comに移転中です。

映画『一度死んでみた』ネタバレあり、あらすじ感想

2020年日本映画
監督:浜崎慎治
主演:広瀬すず

93分で終わる映画は最近じゃ貴重ですね!

目次です。好きなところから読めます。

 

 

【序盤のあらすじ】


大学3年生の野畑七瀬は、製薬会社を経営する父が「研究一筋で家族をないがしろにした」ことに反発しています。
とくに新薬の開発のため母の死に目にも立ち会わなかったことに強い憤りを感じているのです。


そのため、父を「象のフンの臭いがする!」と毛嫌いし、さらにデスメタルバンドを結成し、父への恨み言を連ねた『一度死ね!』を歌いますが、育ちがいいので語尾が「~です」です(笑)


父親のことを「クソ親父」と呼んで反抗期まっしぐらのように見えますが、実際は「研究者になって会社の跡を継いでほしい」という父の希望通りに薬学部を選んでおり、複雑な心境が窺えます。


母の死に目に会わなかったことを除けば、父は七瀬が子どもの頃から公園や花火大会、ドライブ旅行など様々な家族レジャーに連れ出しており、実際には家族をないがしろにしていたわけではありません。
今も反抗期の七瀬を心配して、会社の部下松岡(通称ゴースト:自動ドアが反応しないほど存在感がないから)を七瀬のお守り役につけています。


12月23日も元気よく「一度死ね~」とライブで父をディスっていたところ、本当に父が死んだという驚愕の知らせが七瀬に入りました。

 

【父の死の真相】


じつは野畑製薬は完成間近の若返り薬『ロミオ』を巡って、ライバル企業ワトスン製薬社長田辺から合併という名の乗っ取りを画策されています。
野畑社長は「ロミオの内部情報を田辺に流している内通者をあぶりだすために」と部下の渡部が提案した作戦に乗りました。


それは『ジュリエット』という「2日だけ死ねる」新薬を飲んで自らの死を偽装することです。


合併に強く反対している社長が死ねば、役員に潜んでいる裏切り者がワトスンとの合併に乗り出すだろうという目論見です。
しかしこれは渡部の罠でした。
田辺に情報を流していた裏切り者は渡部自身だったのです。
というか、乗っ取りのためにワトスン田辺が野畑製薬に送りこんだスパイです。


邪魔な野畑社長を仮死状態にさせるとすぐに渡部は役員会を開き、事前に社長に書かせておいた遺書を公表しました。
遺書は2通あり、1通目は「社長の座を娘の七瀬に譲る」という内容です。
2通目はかなり後で出てきますが、ご都合主義用だから忘れてだいじょうぶです(笑)


実権も経営能力もない七瀬を社長にすえた渡部は、ただちに役員たちにワトスンとの合併への合意を迫りますが、元社長の怨念を恐れた役員たちがそれを拒否しました。
乗っ取り作戦に失敗した渡部が指示を仰ぐと、田辺は「野畑の死体を蘇る前に火葬しろ」と命令します。


野畑社長がジュリエットを飲んだのは12月23日14:03分――つまり復活は25日の14:03分。
渡部はそれまでに死体を火葬する手はずを整えるのでした。

 

【妨害合戦】


渡部は告別式を行わないことにして、25日の11時に死体を火葬すると発表しました。
たまたま渡部が社長を仮死状態にして会社を乗っ取ろうと画策しているところを目撃したゴーストは、七瀬にすべてを打ち明けます。


「野畑元社長の完全殺害」という渡部の目論見を知ってもなお七瀬は父への反発心から救おうとしませんでしたが、ゴーストの説得によって自分が父を嫌うどころか大好きなことに気づきました。


ここからワトスン側と七瀬側の攻防が始まります。


まず七瀬は新社長の立場を利用して役員会を招集し、「どうしても告別式をやってほしい」と泣き落とし、火葬時間を遅らせようとします。
これに対して田辺と渡部は近隣の葬儀場をすべて予約して告別式そのものの開催を妨害する策で対抗しました。


葬儀場を抑えられてしまった七瀬はたまたま郷ひろみのディナーショーが中止になって空いていた催事場に目を付けます。
「うちで葬儀はちょっと……」と催事場の担当者に渋られたので「葬儀じゃなくてデスメタルバンドのミサです!」と強引に説き伏せて告別式の会場をゲットしました。


すると田辺は棺桶を買い占めて告別式を阻止しようとします。
この買い占め作戦には七瀬もしてやられた形になりますが、デスメタルバンドの仲間がたまたま棺桶を確保していました。
デスメタルバンドがたまたま棺桶を持っていることはよくあることです、いいね?


そこで田辺はさらなる強硬策に打って出て、13時で予定されていた告別式を11時からに変更してしまいます。
なぜ予約したのと違う人物が予定時刻を変更できるのか知りませんが、とにかくそうなりました、なったからしょうがないです!
こうして時間工作合戦では田辺に軍配があがったのです。

 

【父と娘の思い】


翌、運命の12月25日。
「告別式を行って父の復活まで時間を稼ぐ」という手段に失敗した七瀬とゴーストは、復活そのものを早める方法がないか探します。
それを助けるために霊魂になった父がジェスチャーゲームで七瀬に「研究ノート」のことを伝えました。


七瀬たちはさっそく自宅に帰り、父の娘への思いがたっぷりこもったパスワードを解き、研究ノートをゲットします。
その過程で七瀬は「父が母の死に目に来なかったのは、母を治療するための薬を最後まで作り続けていたから」と知りました。
家から会場に行こうとすると田辺の手の者に襲われますが、日ごろ父への憎しみのためにサンドバッグを殴る蹴るなどしていたおかげであっさり撃退できました。


告別式では、いろいろな人が野畑元社長との別れを惜しんでいます。
「宇宙に行くこと」が夢だった元社長と親交が深かった宇宙飛行士の野口聡一氏(本人)も駆けつけました。


田辺は告別式の時間を早めるだけでなく、マスコミを呼び集めて「野畑製薬とワトスン製薬の合併」を発表する場に変えてしまいます。
新社長の同意もなく、役員会での合意も得られていないのにどうしてそんなことが可能になるのでしょうか?
じつは田辺にはちゃんと勝算があるのですが、それが明らかになるのはまだ後です。


さて、野畑元社長の研究ノートから「復活を早めるには電流を流すこと」と知った七瀬たちは告別式会場へ乗りこみました。
田辺側の手下どもが死体への接近を阻止しようとしますが、ゴーストが持ち前の存在感のなさを発揮して棺に近寄り、死体にキスをしました。


帯電している人間同士が接触することで、静電気が発生することを利用したキスAEDです。
しかし電流が弱すぎたのか、野畑元社長は復活しません。


業を煮やした田辺の手の者によって棺桶が強引に持ち去られ、火葬場に運ばれます。
喪主(七瀬)の許可もなく遺体を移動させるのは「窃盗罪にあたるのではないか?」と思われるかもしれませんが、だいじょうぶ、その問題も田辺は解決済みです。
田辺たちは火葬炉にぽいっと棺桶を放り込み、これにてザ・エンドとなりました。


愛する父を生きたまま焼かれてしまった七瀬は絶望します。
せっかく素直になれたというのに、父に愛を伝えられなかったのですから。
想いは伝えられるうちに言葉にして伝えなければ通じないということを、その機会が永遠に失われた今、思い知るのでした……。
まあこの世界設定だとあの世があるので、七瀬が死んだあとにそこで伝えればいいんですけど(笑)

 

【ロミオは完成していた】


七瀬が嘆き悲しみ、田辺が勝ち誇っていると、なんと野畑元社長が火葬炉のなかから生きて現れたではありませんか!
宇宙好きだった野畑元社長の棺桶に遺品として収められていた本物の宇宙服を着たため、焼け死なずに済んだのです。
しかし法的には野畑製薬の現社長は七瀬です――え、七瀬なの?


七瀬を社長とする根拠は遺言状ですが、本人が生きている以上遺言状の効力は発揮しないはずです。
死んでいた人間が生き返った場合を想定した法律はたぶんないので、田辺は「現社長は七瀬」ということで強引に話を進めようとしました。


ここで2枚目の遺言状を渡部が出してきますが、だから本人生きて、ここにいるから(笑)


1枚目のときは本人が死んでたから効力を発揮したとしても、2枚目はもう無効なんですけど、田辺と渡部の勢いに押されて誰も突っ込めません。
2枚目の内容は「新社長七瀬は、問題が起こったときその場にいる最も年長者の指示を聞くこと」というものでした。


だれか~そこらへん歩いてるおじいちゃんおばあちゃん片っ端からつれてきて~!
ここ、両陣営による借りもの競争の始まりかと思いました(笑)


どこから突っ込めばいいのかわからないグダグダな遺言ですが、やはり田辺の勢いに押されて誰も突っ込めず、田辺が「ワトスンと野畑の合併」を決定してしまいます。
ちなみに田辺は60歳だそうです。
60近い野畑社長の火葬に来ている人物の最年長者が60歳ということには驚きですが、さらなる驚きが待っていました。


どう見ても30代にしか見えない野畑製薬の研究員である藤井が「わし80歳だから、わしの勝ち、合併はなーし」と言いだしたのです。
じつは藤井はロミオ開発のために自らの肉体で治験を繰り返したため、若返っていたのでした。
なんとロミオはすでに完成していたのです!


これにて田辺と渡部の野望は撃沈、合併話はなしになりました。
七瀬と父はお互いに言葉足らずだったことを反省し、和解します。
さらに七瀬は野畑製薬に入社して父の跡を継ぐ決心を固めたのでした。
え、今、社長じゃないの?(笑)
というところで、終わりです。
めでたしめでたし!

 

【まとめ】

 

公表すればよくね?度☆☆☆☆☆
七瀬側が「野畑社長は新薬ジュリエットを飲んで2日間仮死状態になっているだけ」と公表すればそれでゲームセットのはずですが、なぜか誰も思いつきません。


仮死薬ジュリエットのネタ元である『ロミオとジュリエット』では、対立する2家に属するロミオとジュリエットは「死んだと思わせて駆け落ちするため」に仮死薬を使うので、バレるわけにはいきません。


ところが、本作の場合「仮死状態だと公表してもなんの問題もない」ので、それをやれば野畑社長を火葬の脅威からかんたんに守れます。
こじつけみたいなもんでもいいから、公表できない理由があればよかったと思います。

 

 

短くてうれしい度☆☆☆☆☆
本編93分ということで、気軽に観れました!
良質かどうかは知りませんが、キュッとしまったコメディだったのはグッドジョブ!

 

 

日本アカデミー賞優秀主演女優賞度☆☆☆☆☆
事実です。
そうなんですね~、はい。
「デスデスデスデス~」の歌がよかったのかな?
おめでとうございます!

私は広瀬すずのファンボーイなので一応喜んでいるフリをしときます(!?)

 

「ほらここ突っ込めるぞ、突っ込みたいだろ、ほ~ら突っ込めよ~」という部分がたくさん用意されているので、ポテチ片手に突っ込むのが趣味の人にはぴったりじゃないでしょうか。
以上です!