『ものがたりいちば』

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映画『式日』ネタバレあり、あらすじ感想

2000年日本映画
監督:庵野秀明
主演:岩井俊二

 目次です。好きなところから読めます。

 

【序盤のあらすじ】


故郷の宇部に帰郷した男は線路で横たわる彼女と出会いました。
赤い傘を持ち赤い服を着た彼女は、線路に寝ることを毎日の『儀式』だと言います。
話してみると彼女は「明日はわたしの誕生日」と言いますが、翌日もその翌日も「明日は誕生日」と言い続けるのです。
プレゼントを毎日ねだっているわけではありません(笑)


興味を持った男は毎日彼女を探しだして会話するのですが、ある日家に招待されました。
彼女の家は7階建てのビルで、家具店の跡地に1人で住んでいるようです。
赤く彩られた部屋には固定電話がいくつもあり、彼女が再生した録音テープには母親のヒステリックな声が収められていました。
今でいう毒親ですね。


男は家の鍵を渡されましたが、地下に入ることは禁じられました。
彼女には儀式がもう1つあります。
早朝に起きて6時きっかりに時報を聞き、それから屋上へ行って自分が飛び下りたくならないかどうか確かめることです。


起床が早いのに、就寝も夜明け頃なので彼女はほとんど眠りません。
眠るのが怖いのです。
明らかに病んでいますが、男は彼女から距離を取ろうとしません。


じつは男は映画監督で、映画のネタとして彼女に興味を持っているのです。
カントクはホテルを引き払い、彼女の家に滞在して密着撮影を始めました。
こうして2人の奇妙な生活が始まったのです。

 

―――ネタバレ注意―――

 

 

【彼女とは】


道を歩いているとき、彼女はエロ本を拾ったことから「セックスが嫌い」と発言します。
ただの男女になるのが嫌だそうです。


仲良くなったからかわかりませんが、ある日彼女はカントクが秘密の地下に入ることを許可しました。
地下は水浸しで、赤い傘がたくさん並べられていて、奥にはロウソクの飾られた祭壇のようなものがあります。


すぐに回れ右して帰りたいやべえところですが、カントクは果敢にも祭壇に近づき、ロウソクに火をつけようとしました。
すると彼女にバケツで水をぶっかけられてしまいました(笑)


翌日、いつものように線路に横たわっていた彼女を、車から降りてきた謎の男がじっと見つめます。
そのせいで彼女は錯乱してしまい、異常行動の種類が変化してしまいました。
急に猫を拾ってきて四六時中その猫と遊ぶようになったのです。
猫といるあいだカントクの存在を無視して、呼びかけにも答えません。


早朝屋上で生存意欲の確認をする、線路に横たわるといった日課の儀式も廃止されました。
先述したように彼女はほとんど眠らないので、猫は一日中つきまとわれて遊ばされるハメになります。
疲れてしょうがないので数日後猫はどこかへ脱走しました。
タダ餌の高さを思い知ったようです(笑)


その夜、猫を探しに行ったのか、彼女も帰りませんでした。
翌日帰ってきた彼女は怒りだし、カントクが「しばらくいなくなってた!」と責めてきます。
どうやら1つ以上の個体を同時に認識することができないようです。
カントクが「どこにもいかない」というと彼女はますますなついてきて、2人で添い寝することになりました。
すると、彼女は翌朝寝坊してしまうくらいぐっすり眠れたのです。

 

【関係の重さ】


親密さを増した2人は遊園地や動物園でデートをしたり、街を散歩したりとふつうの恋人のようなことをするようになります。
彼女も出会った頃の奇抜なメイクとファッションではなく、ふつうの年頃の女の子の恰好をするようになりました。


心を許したためか、彼女は自分の話をよくします。
とくに家族のことです。
父親は他に女を作って出て行き事故で死亡、出来のいい憧れの姉と比べられて母親から辛く当たられてきたとのことです。
結局母も死んでしまってもう家族は姉しか残っていないようです。


さて、外にいるときも家にいるときもベタベタして、すごく仲のいいカップルのようですが、この頃になるとカントクは彼女の存在を鬱陶しいと感じるようになっています。
依存されるのが重いと感じているのです。
カントクの感情を彼女も感じ取ったのか、カントクが携帯の着信を無視したのを見て「わたしもいつかそうされるんだ……」と怯えを口にしました。


2人で町に出たとき、カントクは旧友と再会して話しこみます。
その間彼女もある人物と再会しました。
自転車に乗って眼帯をした男です。
自転車の男は「返せ!」と言っていきなり彼女に掴みかかります。


彼女が「お姉ちゃんがもってる!」と逃げだしたので、追いかけっこが発生しました。
異変に気付いたカントクが後を追いますが、走らずに悠然と歩いて追いかけるのでまったく追いつく気配がありません(笑)
結局彼女は逃げ切り、カントクは自転車の男に声をかけるのですが、無視されてしまいました。


先ほど再会した級友から同窓会のお知らせがきたので、カントクは参加します。
懐かしい面々との楽しいひと時を過ごしたあと、家に帰ったカントクは彼女に「女といたんでしょう!?」と問い詰められました。
同窓会だと答えても嫉妬に狂った彼女は信じません。


カントクに馬乗りになってキスをして「セックスすればずっといっしょにいてくれる?」と迫ります。
セックスはしたいがずっといっしょにはいたくないカントクはその契約を結びたくなくて答えに詰まります(笑)
なんとか修羅場はおさまり、2人は眠りにつきました。

 

【真相】


翌朝早く起きた彼女はカントクの携帯から勝手に電話をかけます。
応答した相手が女の声だったことに驚きます。
ダイアルに名前が出てるからそもそもかける前にわかるはずなので、どうやら適当にポチったようです(笑)
あからさまに仕事相手っぽい応答をしているのに、彼女はまた嫉妬の炎を燃やします。


このことが決定的な出来事となり、彼女は『いなく』なりました。
実際に失踪したわけではなく、お姉ちゃんになりきってしまったのです(笑)
さばさばとした感じでカントクにしきりに「妹を大事にするように」と繰り返します(笑)
どうしていいかわからず茶番に付き合うカントクを連れて彼女はこの前の自転車の男に会いに行きました。


ですが、自転車の男は茶番に一切付き合ってくれません。
じつはこの男は昔お姉ちゃんと付き合っていたのですが、お姉ちゃんと別れたあと、妹である彼女と付き合っていたのです。
自転車の男は彼女の精神的逃避を許さず、身勝手さを責めます。


その責めに耐え切れず、彼女は自分をお姉ちゃんと思いこむことができなくなり、精神を守ることが難しくなりました。


その夜家に帰ったカントクがかかってきた電話に出ると、相手は彼女の母でした。
母は死んでなどいなかったのです。
監督が知らせに行くと彼女は線路で「幸せになりたい~」と鼻歌を口ずさみながら、レールに置き石を並べていました(笑)


母から電話がかかってきたと聞くと彼女は「なんで勝手に電話に出るの!」とわめき散らしカントクに「いなくなれ!」と叫びます。
しかしカントクがいなくならないので、落ち着きを取り戻しました。


母が明日会いにくるということで、観念した彼女は本当のことを語ります。
姉と比較され辛い思いをしてきたのは以前話した通りですが、そのことで何度も心の中で母を殺したそうです。
それでも現実の母がいなくならなかったので、自分が家出することにして、母を死んだことにして自分でもそれを信じたのでした。


毎日が誕生日前日で、いっこうに誕生日がやってこないのも、父親が去ったのが自分の誕生日だったからです。
『誕生日になると大切な人がいなくなる』という思いこみが、彼女を永遠に誕生日前日に縛り付けていました。
カントクは彼女が虚構のなかに生きていたことを知ったのです。


翌日、現れた母親はしおらしく彼女に謝ります。
反省しているから家に帰ってきてほしいと涙ながらに何度も訴えますが、なんかカントクのほうをチラチラ様子見しながら話しています。
家族に当たり散らす人間も外では意外に人当たりがよかったりするので、カントクがいるからしおらしく装っているだけかもしれません。


母親が去るとカントクは彼女を慰め、「君の誕生日は喜ばしい日だ」と励まします。
呪縛から解き放たれた彼女はカントクに本当の誕生日を教えるのでした。

 

【まとめ】

 

大竹しのぶのヒステリー演技怖い度☆☆☆☆☆
留守電でのわめき散らし方がハンパじゃねえっす……。
あんな調子で毎日いびられたら、そら精神病みますわ……。

 

ナレーション嘘つき度☆☆☆☆☆
映画のネタになりそうだから近づいたのに、ナレーションでは「彼女を救いたいと思った」などとぬけぬけときれいごとをぬかしておりました(笑)
まさに信用できない語り部

 

車の男はなんだったの度☆☆☆☆☆
なんだったの?(笑)

以上です。