『ものがたりいちば』

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「激動の昭和史 軍閥」の感想

どんなホラー映画よりも怖い……。

 

1970年日本映画
監督:堀川弘通
主演:小林桂樹

 

 

 

 

序盤のかんたんなあらすじ

 

一部の過激な青年将校らが激発した2・26事件で、内閣の重臣が複数犠牲となりだれもが暗殺の恐怖に怯える最中、陸軍と海軍の対立は激化していく。


陸軍はシナ戦線の勝利にこだわるあまり無謀な戦線の拡大を主張し、絶対に勝てないとわかっている対米戦をメンツのために反対できない海軍。


日本の侵略行為に対するアメリカの態度硬化は止まらず、ついに対日石油禁輸措置が発動してしまう。


これによって陸海軍は歩調を合わせて対米開戦を決意するのであった……。

 

 

――ネタバレ注意!――

 

ネタバレ感想

 

国民総ネトウヨ度☆☆☆☆☆
開戦当初「やった~!勝った~!」などとのんきにバンザイしておりました奥さまたちが、敗戦間際に竹やりの訓練をしている姿は滑稽を通り越して恐怖ですらあります。


約10年間の自滅の過程がとんでもないテンポで進んでいきます。


おもに軍人・政治家サイドと報道関係者サイドの視点から描かれるのですが、最初はまともなことを言っていた人物も状況の悪化にともなってどんどん頭が悪くなっていきます(笑)。


東条英機も当初は開戦には慎重な立場でした。


何度も海軍さんに「勝算はあるのか?」と確認していましたが、海軍さんはそのたびに(絶対勝てないけどメンツが潰れるのが嫌だから)「勝てるんじゃないですかね……(超小声)」とへたれて嘘をこきます。


開戦に慎重な態度が陸軍内で批判され始めてしまったので、東条はメンツのために対米強硬派に転じます。


そして口を開けば「必勝の信念」という呪文を唱えるようになります(笑)。
そんな東条総理を国民は「東条さぁん東条さぁん!」とアイドルのようにもてはやします。


もうこれ全員ネトウヨだな!?
ネットはないですけど(笑)。

 

 

「日本が勝てばいいと思ったやつらは全員死刑だ!!!」度☆☆☆☆☆
戦況が悪化し、特攻(笑)を翌日に控えたとある神風特攻隊員の魂の叫びです。


このセリフのなにがすばらしいかと言えば「日本が勝てると思ったやつら」じゃなくて「日本が勝てばいいと思ったやつら」であることです。


「負ける戦争だから悪いのか!?勝てる戦争ならやってもいいのか!?」
これもその特攻隊員のセリフですが、まったくもっておっしゃるとおりです。


毎年夏になると戦争反省大会が各メディアで催されますが、たいがい第二次大戦のことばかりです。


敗戦の歴史……戦争の悲劇……戦争の悪……悲惨な戦争体験……。


やられたから反省、負けたから反省にしか見えないんですけど!
万が一勝ってたらぜんぜん反省してなかったんじゃないですかね~。


「日本が負けるためになら俺は喜んで命を捨てる!」
と、やけくそ以外のなにものでもない発言を残して無意味な特攻に赴く隊員を観ていると、こいつらさっさと負けねえかな~という気分になりました。


あの隊員の言うとおり「日本が勝てばいいと思ったやつら」は全員死ねばいい、いや死ね!


だからラストでB29の大編隊が上空に現れたときは、安心すら覚えました。
やっとアメリカさまにこのバツゲームを終わらせていただけるんだ……と。


そこで終わっていればアメリカ信者が1人爆誕して終わるだけでしたが、映画はまだ続きます。


この映画の巧みなところは、B29の爆撃のあとに挿入される何枚もの写真です。


「てめえらの自業自得じゃー!燃えろー!」などともはやどこの国の人間かわからない謎の高揚感に満たされていたわたしのまえに提示されたのは、黒焦げになった子どもの死体でした。


あっ……(冷や水)。
自分の心がいちばんのホラーでした……。

 

 

長さを感じない度☆☆☆☆☆
えっ、もう134分たったの!?
そんな感じでした。
とにかく怖かったです!