『ものがたりいちば』

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「ロスト・パトロール」の感想


地味だけど、なにか引っかかるポイントがいっぱいある。

 
2013年、ブラジル制作映画。
第二次大戦ヨーロッパ戦線モノの戦争映画です。
ブラジル人部隊がテーマ、という非常にユニークな戦争映画です。


―――ネタバレ注意!―――

 

 


字幕にメダパニ食らう度☆☆☆☆☆
「商船をイタリア・ドイツ軍に撃沈され、多大な犠牲者をだしたブラジルは、枢軸国に参戦する」


冒頭にこんなテロップが表記されるのですが、やばいです。この時点でわたしはメダパニ食らいました。


恥ずかしながらわたしは第2次大戦でブラジルがどの陣営に参加したか知りませんでした。


念のために書きますが「枢軸国」というのは「イタリア」「ドイツ」「大日本帝国」が主要メンツです。


それと敵対するのは「連合国」で、「イギリス」「アメリカ」「フランス」「ソ連」が主要メンツです。


枢軸国に自国の民間船が多数撃沈されたのに「枢軸国に参戦する」と書いてしまえば、それは脅しに屈したという意味になります。

 

だから、ブラジルが枢軸国側に参加して連合国軍と戦うことになったんだな、と思いました。情けねー連中だな!とか思っちゃったりしました。


ところが、直後イタリアに到着したブラジル兵たちはアメリカ軍将校の指揮下に入ったと説明されます。


え?
なんで?


しかも、ブラジル部隊はドイツ軍を恐れています。枢軸国に参加したら、味方のはずなのに。


ご安心ください。歴史改変ファンタジーではありません。
もちろん、ブラジルは情けない国家ではありませんでした。


枢軸国の「通商破壊作戦」によって被害をうけた報復として、連合国軍に参加することを表明したのです。


自分の無知無教養が悪いとはいっても、「連合国に参戦する」と書いてくれていたら連合国の仲間になると理解できたと思うんだけどな……。

 

 

地雷って効果的なんだね度☆☆☆☆☆
本作は連合国軍に参加したブラジル人工兵部隊を描く映画です。
舞台はイタリアで、彼らに与えられた任務は地雷の除去任務です。


しかし、ブラジル人部隊はそもそも「なぜヨーロッパの戦争に無関係な自分たちが駆り出されたの?」という疑問を抱いているので士気が低いです。

ドイツ兵にもイタリア兵にも憎しみがありません。


一般的には「戦争は、始めるときには大義が必要だが、継続には憎悪があればいい」と言われます。


戦友、家族、友人が殺されれば、ヘイトが生まれます。そのヘイトが戦争継続の燃料になるのです。


話がそれました。
ブラジル兵たちは、最初の任務で地雷除去に失敗して死亡者を出してしまいます。


もともとモチベーションがなかったうえに戦友が爆死。

これに動揺した2人の兵士が脱走してしまいます。

いまいちモチベがなかった他のメンバーは「勝手にしろ」とばかりに脱走を見逃します。自分たちもやる気がなくなったので勝手に持ち場を離れてしまいます。


ところが、これは後々彼らのクビをしめることになります。


ある国道が地雷原になっていて、米軍の戦車隊に犠牲が出て、進行を阻まれてしまうのです。本来なら作戦地域に展開する工兵隊が除去しているはずだった地雷原です。

つまりブラジル人部隊の管轄です。

任務放棄は重大な軍機違反。

さらに、脱走した2人の兵士が米軍の拠点に帰り着いたということがわかります。

 

脱走も重罪ですが、脱走を見逃したことも重罪です。へたすりゃ軍法会議にかけられて銃殺刑になってしまいます。


そこで、ブラジル人部隊は身の潔白を証明するため、というかやる気がなくてほっつき歩いていたという事実を隠すために、アリバイを作るために、本来の任務だった地雷除去を完遂することを決意します。

たった4人で。


しかし、そこは米軍が除去をあきらめた、危険極まりない地雷原でした。

 

 

影のヒーローはやっぱり影のまま度☆☆☆☆★
結果としてブラジル人部隊は、奇跡とも思える成果をあげました。
米軍すらもあきらめた地雷原をたった数人で除去して、ドイツ軍の進撃を食い止める功績をあげました。


生き残ったブラジル人部隊は、開通した道路を通って意気揚々と進軍してくる米軍を見ます。


命がけで地雷を除去して道路を開通した英雄であるブラジル人部隊には目もくれず、イタリア人たちはほぼなにもしていない米軍をヒーローとして歓待します。

 

 

・かんそう
第2次大戦のヨーロッパに2万人以上のブラジル兵が派兵されていたということを知れたのはとてもよかったです。
ほんとうに世界大戦だったんだな、って実感がわきました。


字幕がだいぶ不親切だったのは不満でしたけど、主要国ではなく、戦う理由がほぼない兵士たちが戦地で右往左往する様子はリアリティがあって面白かったです。