『ものがたりいちば』

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映画『蜜蜂と遠雷』ネタバレあり、あらすじ感想

2019年日本映画
監督:石川慶
主演:松岡茉優

目次です。好きなところから読めます。

 

 

【序盤のあらすじ】


20歳のピアニスト栄伝亜夜が、芳ヶ江国際ピアノコンクールに出場します。
亜夜はかつて天才少女と騒がれましたが、7年前母を亡くした直後に出場したコンクールでやらかして以来表舞台から去っていて、今回が久々のコンクール復帰です。


このコンクールは第10回とまだ歴史が浅いですが、過去の優勝者がショパンコンクールで優勝したことから箔がつき、海外からも多くのピアニストが参加するほど注目される大会になりました。
そんなわけで亜夜以外にも注目される才能が集結しています。


優勝候補のマサル・カルロス・レヴィ・アナトールは亜夜の幼なじみで、現在はジュリアード音楽院に在籍しています。
師匠から完璧を求められてきたテクニシャンです。


高島明石は妻と子を持ち楽器店で働きながら、コンクールに挑戦しています。
「ピアノエリートたちとは違う、生活者としての音楽を表現する」ことにこだわりがあり、年齢制限もあって最後の挑戦なので並々ならぬ気合があります。


そして風間塵は「ピアノの神さま」と呼ばれた今は亡きホフマンという巨匠が推薦して送りこんできた逸材です。
特化型の天才っぽく、ダサくて空気を読まない感じが出ています。
非常にレベルが高い大会となった1次予選を突破した出場者たちは、次に2次予選へと臨みます。

 

【2次予選】


2次予選では新曲が課題曲となっており、しかも曲の後半部分を演奏者自身が作曲することが求められます。
こういうのをカデンツァと言うようです。


4人のなかで最初に演奏したマサルは師匠と作り上げた超絶技巧曲を完璧に弾きこなし、観衆と審査員の度肝を抜きました。
カデンツァの作曲に難航していた亜夜は、明石の演奏を聞いて、刺激を受けていてもたってもいられなくなります。
すぐにピアノが弾きたい!とコンサート会場の練習ピアノを探すのですが、どれも他の出場者の予約でいっぱいです。


事情を聞いた明石が知り合いのピアノ工房を紹介してくれたので、そこへ向かいました。
いざピアノを弾こうとすると塵が現れて勝手にピアノを弾き始めます。
邪魔なんですけど?
どうやら塵も弾けるピアノを探していたため、亜夜をつけてきたそうです。
邪魔なうえにキモいんですけど?


塵は亜夜に「いっしょに弾こうよ!」と空気の読めないところを見せつけました。
「世界で1人だけになってもピアノさえあればだいじょうぶ」と天才っぽさをアピールされて困惑していた亜夜ですが、2人で連弾し始めると楽しくなります。


ピアノを弾く楽しさを思いだしたことがよかったのか、翌日の演奏ではマサルが「これが即興なんて信じられない!」と称賛するほど見事なカデンツァを披露することができました。
さあ注目される2次予選の結果ですが、マサル・亜夜・塵の3人は突破しました。
残念ながら明石は落選、本選には進むことができませんでした。


4人は仲良くなったので2次予選の打ち上げで浜辺に遊びに行きます。
砂浜につけた足跡で曲当てクイズを始めた3人を見て、明石は「あっち側(天才)のことはわかんねえな……」と半分呆れつつ半分羨ましがりました。

 

【本選リハーサル】


本選はプロのオーケストラつきです。
しかも指揮を取るのは世界的なマエストロ小野寺です。
世界的な指揮者が歴史の浅いコンクールの指揮を引き受けたのは、ホフマンに頼まれたからだそうです。
今は亡きピアノの神さまホフマンが「なぜこのコンクールにそこまでこだわったのか……?」その謎は最後まで明かされません(笑)


リハーサルを迎えるにあたって小野寺はオーケストラのみなさんに「レベルの低いピアニストに合わせる必要ないからな!」と出場者にプレッシャーをかける気まんまんですが、若きピアニストたちも一筋縄ではいきません。


マサルは「フルート、タイミングずれてる」と何度も演奏を中断させ、塵にいたってはオケのメンバーに立ち位置の移動を命じるなどそれぞれの音楽へのこだわりを見せつけて巨匠を困惑させます。


というわけで、とくに自己主張のない亜夜が小野寺のカモにされました。
演奏を途中で止められて「すまんすまん、音が小さいからピアノが壊れたのかと思ったわ」と煽られます。
マサルと塵で溜まったストレスをおとなしい亜夜で解消する巨匠でした。
リハーサルでの失態を見ていた主催者の女性にも「覚悟がないなら今のうちにやめたら?」と煽られて迷う亜夜ですが、嫌でも本番の日は来てしまいます。

 

【本選】


3人のなかで最初に演奏するのはオーケストラと息が合わなくて苦労していたマサルです。
本番直前まで試行錯誤をしているマサルに亜夜はアドバイスをしました。
ピアノ工房を紹介してくれた明石といい、どうやらこの業界、敵に塩を送るのが当たり前のことのようです。


現実ではそんなわけないと思うんですけど(笑)


するとマサルはコツをつかみ、素晴らしい演奏を披露しました。
見学にきていた明石が「観衆に愛されてる」と感心しますが、亜夜は「観衆だけじゃなくて、世界に愛されてます」と言って泣き出してしまいます。


結局迷いを断ち切れなかった亜夜は、塵が演奏しているときに会場を去ろうとしますが、そのときふと「世界は音楽で満ちいている」という亡き母の言葉を思い出し、出戻りします。
迷いを断ち切った亜夜はリハーサルとは打って変わってダイナミックな演奏を披露します。
これにはリハーサルで「音が小さくて聞こえない」とパワハラをかけた巨匠もニッコリです。


コンテスタントたちはそれぞれに素晴らしいパフォーマンスを見せたのでした。
注目の結果は1位マサル、2位亜夜、3位塵となりました。


物語的にこの順位になった理由を無理やり考察してみますと「コンポーザー(作曲家)ピアニストになりたい」という明確な目標を持つマサルが優勝で、リハビリを終えたばかりの亜夜が2位、明らかに1番天才っぽく描かれていた塵が3位の理由は「ピアノを持ってない(驚愕)」からでしょう。
ピアノを持ってないのに3位とか天才にもほどがあります(笑)


若きピアニストたちの将来を決めるコンクールはこうして幕を閉じるのでした。
おしまい。

 

【まとめ】

 

音がテーマの映画なのに……度☆☆☆☆☆
これ言いだすと邦画とか邦ドラマだいたいそうなんですけど、BGMとセリフがかぶったときBGMの音量がデカすぎてなに言ってるか聞こえないシーンがありました。
人がしゃべるときはBGMの音量を小さくしてほしいです!

 

同じ曲ばかりで飽きそう度☆☆☆☆☆
予選はみんなが同じ曲を弾いてたので、仕事でやってる審査員はともかく聴衆は飽きて寝そうです……。

 

ピアニストはキャッチャーと似ている度☆☆☆☆☆
劇中でコンサートピアニストのプロになるむずかしさが語られていましたが、ヴァイオリンや管楽器のように複数人求められるポジションと違って基本的にピアノは1人いればいい役職なので、より狭き門っぽいなと思いました。
野球だと野手はレギュラーの枠が7人、ピッチャーは先発中継ぎ押さえで10人以上枠がありますが、キャッチャーは1人なので正捕手が1番狭き門になりますが、そんな感じですかね。

 

最後に亜夜が逃げだそうとしたりやっぱり気が変わって戻ってきたりのくだりはちょっと心境の変化の理由がよくわかりませんでした。

全体的に亜夜のキャラ描写が薄かったです。

ジュリアード音楽院のエリートで光の当たる道を進み続けて「過去の曲を完璧に演奏する技術を叩きこまれてきた」マサルは、コンポーザーピアニストとしてクラシック界を改革しようと未来を見据えているというキャラ性がありました。

明石には妻子を持つ社会人でありながら「生活者としての音楽を追求する」という信念がありました。

「ピアノが好きだからピアノさえあれば他にはなにもいらない」と豪語する塵にも確固としたキャラ性があり、説得力がありました。

だってピアニストなのにピアノを持ってないんですから、そりゃあピアノ欲しいですわ(笑)

というわけで亜夜のキャラが弱くて「ピアニストとしてどこらへんが強みがあって魅力的なのか」とか「なぜ亜夜が優れた演奏をできるのか」とか「7年も潜伏していた亜夜が注目される理由」とかがよくわかりませんでした。

おかげでラストの覚醒シーンの納得性が高くなくて、覚醒による快感も薄かったです。

 

映画自体はシンプルでおもしろかったです。
シンプルとか偉そうに書きましたが、クラシック無知なのでタイトルの蜜蜂要素がどこにあったのか気づきませんでした。

結論:亜夜のキャラが薄い!!!
以上です。