『ものがたりいちば』

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もう一度観たい名作ドラマ「アンナチュラル」10話(最終話)『旅の終わり』ネタバレストーリーあらすじ感想考察

ネタバレありますご注意を!
わたしは放送時リアルタイムで観てました。
今回は3年ぶり2度目の観賞です。

 目次です。好きなところから読めます。

 

高瀬、殺人ではないと主張する


前回、ついに中堂さんの恋人麹屋ユキコを含む複数の殺人事件の犯人が特定されました。
その犯人である高瀬を中堂さんがぶっ殺しに行ったのですが、すでに高瀬は警察署に出頭していました。


今回はその取り調べから始まります。
高瀬は容疑をかけられたすべての事件で殺害を否定しました。


被害者はなんらかの原因で勝手に死んで、殺人罪に問われることを恐れて遺体を解体したり隠したりしたものの、殺してはいないという理屈です。
めちゃくちゃな理屈ですが、他殺だったと証明できない限り殺人罪で起訴することすらできないという不条理な事態になっています。


公判の準備期間中に宍戸の書いた高瀬の殺人告白本が出版され、世間をにぎわせます。
このなかで高瀬は被害者をどう殺し、どう死体処理したかを克明に語っているのですが、それは実際にやったことではなくただの妄想という設定でした。


26件の殺人についてすべて告白しているわけではなく、証拠が現存していて殺人が立証できそうな事件は除外されているのです。
つまり、殺人を告白した本なのに殺人罪で起訴するにはなんの役にも立たないのです。


中世なら拷問して無理やり吐かせて終了ですが、時は現代、被疑者も人権が守られているのでそうはいきません。
とある国ではほんの数十年前まで刑事が被疑者に殴る蹴るの暴行をくわえて無理やり自白させていたそうですが(笑)


同様の拷問まがいの暴行が犯人じゃない人間にも行われ、多発した冤罪がいまだに晴らされていないパラダイスみたいな国があるそうですよ(恐怖)
どことは言いませんけど(ここ)

 

 

法で裁くために法を捻じ曲げるジレンマ


唯一の突破口はホルマリンによる『他殺』ということがはっきりしているスーツケースの被害者の事件ですが、それにも暗雲が垂れ込めています。


UDIにやってきた烏田検事が「高瀬の弁護団が被害者の死因はボツリヌス菌による中毒死だと主張している」とミコトに告げました。
前回東海林ががんばってボツリヌス菌を検出してしまったことが裏目に出た形です。


烏田検事はミコトに「鑑定書からボツリヌス菌に関連する記述を削除してほしい」と依頼します。
つまり嘘の鑑定書を書け、ということです。
ミコトは即答を避けました。


法医学者として嘘の鑑定書を書きたくないという気持ちはありますが、アルファベットと同じ数=26人も殺した高瀬を法で裁く糸口はもうこの事件しかないからです。


ここでさらなる問題が発生します。
『なぜ高瀬はボツリヌス菌が検出された件を出頭した時点で知っていたのか?』
ということです。

 

公判前手続きで鑑定書を見た弁護団がそう主張するのはわかりますが、高瀬が出頭したタイミングでは鑑定書はまだ提出されていないので、UDI内部の人間と毛利刑事などの一部の警察関係者しか知らないはずです。


答えは1つしかありません。
高瀬と共謀していた宍戸にだれかがしゃべったからです。
神倉所長がついに六郎のスパイ行為咎めました。


六郎はスパイの過去を認め謝罪しましたが、高瀬にボツリヌス菌という言い逃れの武器を与えた罪は重く、中堂さんは静かに怒り、東海林は裏切り行為にショックを受けて涙を流しますが、ミコトはそれほど動じません。


『母親に殺されかけた』という最大の裏切り行為を経験しているので、裏切り耐性が高いからかもしれません。


いずれにせよ、被害者がボツリヌス菌による食中毒で死んだあとにホルマリンが注入されたのではなく、ホルマリンによって死んだということを証明できなければ、高瀬は死体損壊・遺棄罪にしか問われずたった数年で出所してしまいます。


被害者の遺体はすでに火葬済みなので、もう再解剖はできません。
早すぎるんだけどマジでwww
まあ、ドラマ上では5分10分しか経っていませんですが、ドラマの内部世界では高瀬出頭から数か月が経過していますからしかたありません。


ミコトや東海林はなんとかして保存した臓器や検体などから殺人を立証しようと試行錯誤するのですが、なかなかうまくいきません。
その間中堂さんはずっと宍戸の本を熟読しています。
ファンになったのかな?(笑)


結局、高瀬を殺人罪で起訴するためにはミコトが鑑定書を改ざんすることしか手段がありません。
検察庁検事総長からも新しい鑑定書を出さなければUDIへの補助金を打ち切るという通達がきました。


葛藤を続けるミコトに中堂さんがボツリヌス菌に関する項目を削除した鑑定書を渡します。
しかし、中堂さんはミコトが嘘の鑑定書を提出するわけがないと信じていたようで、その夜葬儀社の木林のもとへ行き、遺体の搬送と火葬を依頼しました。


木林が遺体はどこにあるのか、と聞くと「まだ生きてる」と中堂さんは答えました。
これから殺す気やwww
高瀬は拘置所にいるので手出しはできません。
ということは、ターゲットは宍戸しかいません。


翌日、嘘ではなく正しい鑑定書を検察に提出したのはミコトではなく神倉所長でした。
葛藤を続けるミコトを見かねての行動でしたが、これで補助金の打ち切りは決定で、UDIの存続が厳しくなってしまいました。


ミコトから電話でそのことを聞いた中堂さんは昨日付けの退職願を神倉所長に渡すよう頼みます。
これから宍戸を殺す以上、UDIの職員として殺人を犯すことを避けるためでしょう。


補助金を失って財政的に厳しくなるUDIが、さらに職員から殺人犯を出したとなると存続は絶望的だからです。


このことで中堂さんが人殺しをするつもりと察知したミコトは、木林から中堂さんの居場所を聞き出し、たまたまUDIに来ていた六郎のバイクで急行します。

 

 

宍戸への拷問


中堂さんは宍戸の自宅に侵入すると、いきなり薬剤を注射します。
注射したのはフグの毒として有名なテトロドトキシンです。
解毒薬を投与しなければ1時間以内に死ぬそうです。


宍戸に解毒薬と引き換えに高瀬の殺人の証拠を出せ、と迫ると宍戸は被害者の唾液が付着しているゴムボールの入った瓶を出してきました。
2人は解毒薬と瓶を交換します。


するとすばやく解毒薬を飲み干した宍戸は中堂さんにとびかかり、瓶を上下に振りました。
じつは瓶の底部には硫酸が入っていて、それが被害者のDNAもろともボールを溶かしてしまいました。


これですべての証拠がこの世から消えてしまったのです……。
不測の事態にも備えていた宍戸の用心深さの勝利です。
硫酸がそんなに長い間効果を保ち続けるのか疑問に思ったのでググってみると、半年くらいは持つそうです。


してやったりの宍戸は高笑いしながら「ふぐ毒の解毒剤ありがとよ、中堂センセ」といい気分で勝利の死体蹴りに興じますが、駆けつけたミコトが「ふぐ毒に解毒剤はない」と死刑宣告しました(笑)


中堂さんが最初に注射したのはただの麻酔薬で、解毒剤として渡したほうが本物の毒だったのです。
宍戸は毒を自分であおって死ぬことになるのです。
さすが中堂さん、高瀬の『勝手に死んだ理論』を吸収しています(笑)


ミコトは中堂さんに人殺しをやめるように必死に説得します。
とはいえ、中堂さんにも本気で宍戸を殺すつもりはなかったと思われます。
宍戸を殺せば高瀬も死ぬなら喜んでそうしたでしょうが、もちろんそんなことにはなりません。


あくまで本当に死ぬと自覚するほどの苦しみや痛みを与えて、隠している証拠品を出させることが目的だったのでしょう。
というのも瀕死の宍戸が「証拠はもうない」と言うと、中堂さんは隠し持っていた解毒剤をミコトに渡したからです。

 

 

高速の起死回生!


これで26人もの殺人を犯した極悪人を殺人罪に問うことすらできなくなってしまいました。
と思いきや、意外な人物から新たな希望が生まれます。


高瀬が犯人として捕まったことで、今まで娘を殺したのは中堂さんだと思っていた麹屋ユキコの父親が中堂さんに謝罪するために遠路アメリカからUDIを訪れていたのです。


アメリカは土葬の国――麹屋ユキコの遺体はなんとエンバーミングされて土葬されていました!


って、エンバーミングってなんやねん(笑)
ググってみるとエンバーミングとは、ようするに防腐処理のことでした。
なんで最終回で急に不親切になったんだw


というわけでアメリカから空輸された麹屋ユキコの遺体を再解剖して証拠をゲット!
無事、高瀬は麹屋ユキコ殺害の罪で追起訴され、公判が始まりました。
おらぁとっとと高瀬を絞首台に送れーーーー!!!


高瀬はやっぱり殺害を否定しましたが、被害者の歯の裏から高瀬のDNAが検出されています。
……え?
それだけ?
殺人の証拠としてはちょっと弱いんでは、その証拠?


被害者の口にゴムボールを強引にねじこんだ証拠にはなりますが、殴り倒してニコチンを注入して殺した証拠にはぜんぜんなりません
このままではまた『勝手に死んだ理論』で言い逃れされてしまいます。


烏田検事とミコトもそう思ったらしく、高瀬が母親に虐待されていた過去を持ちだして挑発します。
正直この挑発の趣旨はわたしにはよくわかりませんでした(笑)


すると、よくわからない挑発にまんまと引っかかった高瀬が26人すべての殺害を勝手に認めました。
最後に自分も勝手に死んだwww


なんかこの流れがぜんぜんよくわからなかったのでちょっと考えてみました。
ミコトは高瀬がいまだに母親の虐待によるトラウマの影響下にあり、そのせいで殺人を犯し続けたことを同情するという路線でいきました。


これは世界でも類をみない大犯罪を成し遂げたことを心の中で誇っている高瀬には受け入れがたいレッテルでしょう。
歴史に残る伝説的な偉業が、子どもの八つ当たりレベルに矮小化されてしまうからです。


それは近代犯罪史上最高の殺人者として後世に語りつがれるつもりの高瀬には見逃せないことでした。
こう考えてみると納得感が多少はあがりましたが、残念なことに幸運なことにわたしは連続殺人犯ではないので高瀬の心理状態がよくわかりません(笑)

 

高瀬の心理状態はわかりませんが、ドラマ的な意味は理解できます。
1話か2話でミコトの一家心中の事件を聞いた中堂さんが「今ごろその子は犯罪者か警官になってるだろうな」とコメントしました(中堂さんはその事件で生き残ったの子どもがミコトとは知りません)。


ミコトは母に殺されかけるという最大級の虐待を受けましたが、法医学者になり、人を助ける志をもって生きています。
いっぽう同じく母に虐待された高瀬は犯罪者になりました。


だからこそミコトが「同情する」と言ったのはただの挑発ではなく本心も含まれていたのでしょう。
よい家庭に引き取られて正しく楽しく生きられた自分と歩んだルートが違ったのは、高瀬がだれにも生きる方向を修正してもらえなかったからだと思ったからでしょう。


もしかしたら、高瀬もミコトの発言からそのニュアンスを感じ取ったから、環境や状況のせいで殺人を犯したのではなく「すべて自分の手柄だ」と主張せざるを得ない心境になったのかもしれません。


でもやっぱり、たとえ罪を認めても「母親の虐待のせいだった」という動機の部分を打ち消すことにはならないと思うのですが、いずれにせよ高瀬は罪を自供しました。
法医学犯罪心理学の勝利です!


……え?
そんなオチでいいんですか?
まあ法医学は無敵の学問ではない、ということなんでしょう!


宍戸も殺人ほう助で逮捕され、最後はパワハラ坂本と六郎が戻り、UDIの日常が描かれて終わります。
毒を飲ませて拷問したやつ(中堂さん)が野放しなんですが(笑)


それはきっとシーズン2のネタに使うんでしょう。
だからシーズン2はよ!