『ものがたりいちば』

映画観賞歴5000本以上なりに映画ドラマアニメの感想を書いてます。ゲーム関連はhttps://zwigani.comに移転中です。

「セーフヘイヴン」の感想

地味だけど、意外性抜群の新機軸サスペンス。

 

 

2013年アメリカ映画。
ネタバレ憲法違反案件です。
ラッセ・ハルストレム監督作品。
サイダーハウス・ルール」や「ショコラ」や「HACHI 約束の犬」が有名で、丁寧な演出に定評があり、評価の高い監督です。
ちなみに管理人は「砂漠でサーモン・フィッシング」がお気に入りです。


主演は女優のジュリアン・ハフ
元々は子役で「ハリー・ポッター」にもホグワーツの学生役で出演歴があるらしいです。
歌手活動も行っていて、カントリーシンガーとして活躍されているそうです。

 

 

 

・かんたんなあらすじ(ネタバレなし)
舞台はアメリカのどこか。季節は初夏。
混雑する夜のバスターミナル。足早に歩く若い女性の姿があります。
対面する人にぶつかりまくっているので、かなり急いでいるようです。

パーカーのフードを目深にかぶっていることから、「顔を見られたくない」「誰かから逃げている」ということがわかります。
この女性が本作の主人公ケイティです。


ケイティは隠れるように長距離バスに乗り込みます。
アメリカは国土が広く、鉄道網があまり発展していないので、長距離バスが重要な交通手段になっているそうです)
彼女を追うスーツ姿の男が現れます。

通行人やターミナルの従業員にケイティの顔写真を見せるのですが、いい情報は得られません。

このままでは逃げられると思った彼は発車しかけたバスの前に立ちはだかって、バッジを見せて強引に停車させ乗り込みます。どうやら刑事のようです。


刑事は次から次へとバスを停車させて乗客の顔を確認していくのですが、間一髪、ケイティの乗ったバスがターミナルを離れます。
ほっとしたケイティは、疲れていたのか眠りにつきました。

 

翌日、ケイティは海辺の田舎町に降り立ちます。
彼女は海辺の人気レストランに立ち寄り、「ウェイトレスの募集してませんか?」とオーナーに尋ねます。

観光シーズンのため人手に困っていたオーナーは即決採用して、さっそくその日のうちに働いてもらうことにしました。
仕事を得たケイティはさらに森の中の一軒家を借りて、この街でしばらく暮らすことにしたのです。


とはいえ、逃亡者の身であるケイティは、最初のうちは住人たちとの接触をできるだけ避けようとします。

勤務先のレストランに警察官が現れると、あからさまに動揺して、顔を見られないように隠れたりします。


あやしい……あやしすぎる……。


さて、ケイティはなにをやらかして警察から逃げるハメになったのでしょうか?
彼女を取り逃がしてしまった刑事は、警察署に戻ると、指名手配の登録をします。
その容疑は――「第一級殺人罪」。


人殺しが目立たずに逃亡生活を送る場所として選んだ「セーフヘイヴン」(安全な避難地)がこの街だったのです……。


卑劣な犯罪者を追い詰める執念の刑事は、果たして逃亡者を追い詰めることができるのか!?
というところが、物語の導入部です。

 

 

余談ですが、第一級殺人罪というのは、謀殺罪ともいわれます。
殺人罪はおおまかに「殺意の有無」「計画性の有無」で罰の重さが変わります。
日本でもアメリカでも裁判の争点はだいたいその二つです。
「計画的に殺した」というのがもっとも罪深く、日本での最高刑は死刑、アメリカでも州によっては死刑に処されます。

 

 


サウスポート美しすぎ度☆☆☆☆☆
ケイティが流れ着いた海辺の街の風景がほんとうにきれいです。
田舎街ですが、ちゃんと整備されていて清潔で治安もよさそうで、住人も親切。
疑わない性質なのか、よそ者のケイティの身分確認もぜんぜんしません。
いや、それはダメだろ!


でもわかります。これだけ美しい街に人を騙すような悪人なんかいるわけない、と思ってしまうのは致し方ありません。

 

 

 

レクシーまじかわぃぃ度☆☆☆☆☆
最初に言っておきます。
僕は変態ロリコン野郎ではありません。

これだけははっきりと真実を伝えたかった。


サウスポートについたケイティが最初に立ち寄ったのは、ガソリンスタンド兼コンビニの店です。

余談ですが車社会のアメリカにはこういうスタイルの店が多いようですね。
そこでコーヒーを買おうとするのですが、レジで応対したのは、なんと6、7歳くらいの幼女でした。
レクシーという名前で、経営者の父親を手伝っているのです。
このレクシーがマジでかわぃぃんです。

ちなみに僕は変態ロリコン(以下略)。


人懐っこくて、おまけに聡明です。こんな子が娘だったらかわいくてしょうがないだろうな、って感じです。
サスペンスに興味ない?
ならレクシーだけでも見て帰ってください!

 

 

 

!ネタバレアラート!
ちょっとでも興味を持った方は、この後の文章は観るまえには絶対に見ないでください!
めちゃくちゃ魅力が損なわれます。
!ネタバレアラート!

 

 

 

きれいに騙された度☆☆☆☆★
筆者は騙されるの好きじゃないんですけど、ていうか誰でもそうだと思うんですけど。
犯人や真相を探るサスペンスものもそんなに好きではないです。
「そんなのわかるわけないだろ!」
って、アンフェアに感じてしまうやつが多いんですよね。
でも、この騙され方は爽快でした。

 

結論から申しますと、ケイティは殺人犯でもなんでもありません。
中盤に明らかになるのですが、彼女を追っている刑事はケヴィンという名で、なんと、ケイティの夫です。
勤務中もウォッカのボトルを手放さないアルコール依存症で、酔うと暴力を振るうDVクソ野郎です。


ある日帰宅したケヴィンは、食事中にケイティが勝手に酒を片付けようとしたことで激怒して馬乗りになって彼女の首を絞めます。


やめるように懇願してもやめてくれなかったので、死の恐怖を感じたケイティは身を守るために果物ナイフで彼のわき腹を刺します。

当然致命傷にはなりませんが、一時的にケヴィンは行動不能に陥ります。

ただの正当防衛です。


うんざりしたケイティはお隣さんに助力してもらって、逃げることを決意します。
しかし妻を愛している、というか執着しているケヴィンは必死に追うのです。
そこから冒頭のシーンにつながります。


サスペンス的な魅力はほとんどこれに集約しています。

ケイティが指名手配されたのは、ケヴィンが職権を濫用したからでした。特権を持っているやつがストーカーになったら絶望っすね……。


街で暮らしはじめたケイティは、最高幼女レクシーの父親であるコンビニの店主のアレックスと恋仲になったり、近所に住むジョーという謎めいた女性と仲良くなったりします。
アレックスは何年か前に妻をガンで亡くしており、一家は心の傷が癒えきれていません。
同じく心の傷を抱えたケイティと接するうちに一家は心を開きます。

アレックスは彼女を愛するようになり、子供たちも(レクシーには兄がいる)彼女を受け入れていきます。


そこにDV刑事ケヴィンが現れるのです。
でまあ、ストーカー野郎お決まりの行動をとるのですが、その辺はよくあるストーカーアクションものの流れです。
やべえやつを撃退して、ケイティとアレックス一家は家族になることを決意して前に歩き出しました、めでたしめでたし!

 

物語の最後にケイティの隣人だったジョーの謎が解けるのですが、これはちょっとアンフェアというかいらなくね?と思いました。


実はジョーは、亡くなったアレックスの妻で、後に残した家族のことが心配で現世にとどまっていた幽霊だったのです。
ケイティに近づき、家族の心の傷を癒す手助けをしていたのでした。


最後の最後にいきなり感動のファンタジー要素かましてきましたが、正直、筆者には蛇足にしか思えなかったので鼻ホジしながら観てました。

 

サスペンスといえば犯人探しをするもの、という無意識の思い込みをぶっ壊された、いい作品だと思います!