『ものがたりいちば』

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ドキュメンタリー映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』ネタバレあり、あらすじと感想

2020年日本映画
監督:豊島圭介
出演:芥御大、三島由紀夫、東大全共闘のみなさん
ナレーター:東出昌大

一生懸命聞きましたけど、バカなんで議論の大半意味がわかりませんでした!!!

目次です。

 

【あらすじ】

学生運動全盛期の1969年5月13日。

文学者三島由紀夫は東大全共闘からの討論会のオファーに応えて、東大駒場キャンパスの900番教室に赴きます。


右翼的として知られる三島にとって、暴力革命を標榜する1000人の左翼が待ち受ける場に出向くのはリスクがありますが、数人の手下を引き連れただけで堂々と乗りこみます。


三島を慕う『楯の会』の会員は、三島への襲撃を恐れ、いざというときのために最前列で待機します。
いっぽう三島を招いた全共闘のリーダーも、民青などの他のセクトによる三島の襲撃を恐れて、最前列に警備役の学生を配置していました。


不測の事態があり得るかもしれない状態で始まった討論会ですが、いざ始まってしまうと和やかなムードになります。
最初にスピーチした三島が友好的でユーモラスであったことで、話に引きこまれた会場からは笑いが起こりました。


つぎに学生との討論になるわけですが、三島の友好的な態度を受けてか、学生の側も友好的です。
三島は学生の主張を真摯に聞き、けして一方的に否定しません。
対する学生も三島の態度に敬意を感じ、三島の論に耳を傾けます。


まるでカフェで「それわかる~」「だよね~」「それな~」とお互いを肯定しあうクソつまらん大会みたいなゆる~い雰囲気です。


相手の人格を否定するようなギスギスした言葉の殴り合い、いや、いっそのこと流血の事態を期待するゲスな視聴者のわたしとしては「あれ、この討論会つまんなくね……?」と思い始めます(笑)
ところが、ここでぬるい雰囲気を覆す猛者が現れます。


全共闘の指導的立場の芥です。
前衛芸術家であり、舞台演出家である芥は、幼い娘を抱いて登壇しました。
かわいい赤ちゃんの登場により、会場から暴力の匂いが消し飛んでしまいます。


このひとは老齢となったインタビューでも尖った発言を繰り返す生粋の中2病罹患者ですが、このひとなりに討論会が暴力に終わることを懸念して、わざわざ娘を連れてきたのかもしれません。
もしくは目立ちたいだけで、危ない場所に赤ちゃんを連れてくる頭がアレなひとなのかもしれません(笑)


暴力の匂いを消したあとで、芥は三島に挑発的な議論をふっかけます。
この映画の討論の半分以上は芥と三島の議論です。
もうね、イチャイチャイチャイチャしやがって、完全に2人の世界です。
ていうか芥がなにを言っているのかぜんぜんわかりません。


他の学生と三島の議論はいちおう日本語で行われているので、多少内容はわかりましたが、芥と三島の議論はマジでなにを言ってるのかわかりませんでした。


芥は老齢になったインタビューでも「誰の言葉も真似せず、自分の言葉で話すスタイル」を誇っていましたので、自分語を連発します。
「『権力という時間』ってなんのことや?」とググったらフーコーがどうたらとか出てきたので、哲学用語のようです。

 

おもっくそ真似しとるやんけ(笑)

 

今なら「かっこつけて使った言葉」をググられただけで、「ただのパクリ野郎」なのがバレますが、ネットがなかった昭和時代なので、自分をすごい人物に見せたいとき「重厚でクソつまらん本をがんばって読んだ俺たちだけ知っている言葉」に頼るのはしかたなかったのかもしれません。

 

あ、今でもたまによくそういう人いますね。

PCスマホの漢字変換機能に頼って、むずかしい漢字を使うやつ。

個人的には「ある」を「或る」、「なる」を「成る」とか変換してる人のことは、アホだと推定して文章を読むのをやめます。

実際、がんばって読んでもたいした内容じゃなかったことが多かったですから。

こういう文章こそ、この映画が批判している「情熱のない言葉」なのでしょう。

 

言語はしょせん記号に過ぎないので「だれでも真似できること」「だれでも理解できること」が前提条件ですけど、権威的知性主義に反対している芥の立場としては、「だれでもわかる言葉」を使わないのは矛盾する態度だと思います。

歴史上の誰かが作った単語と文法を真似せずにしゃべれる現代人はいないのですから。


討論会に戻ります。

さすが大人の三島は「うんうんなるほどね」と応じていましたので、芥の若さと矛盾を批判せずに受け入れます。


芥はつねに挑発的というか、なんなら文豪三島にたいして上から目線の態度を崩しません。

しかし、2人だけの時間を過ごすうちに友情のようなものが芽生えたのか、他の学生が三島にしょうもない野次を飛ばすと、「いまそういうのいいから」と言わんばかりに手を振ります。


たっぷり議論したあと、満足した芥は「じゃ、俺、帰っから」と突然会場を後にしてしまいます。
芥が飽きた!(激うまギャグ)


なんなのこのひとwwwwwwwww

三島が本気を出して、論破されるまえにかっこつけて逃げたwwwwwwwww

おもしろすぎんだけどマジでwwwwwwwwww


芥が去った後の討論会は明らかにつまらなくなります(笑)
なんかいろいろなことをぬるく議論して終わりました。


伝説となった討論会の1年半後、楯の会の手下を引き連れた三島は市谷駐屯地に乗りこみ、総監を人質にとって自衛隊員たちにクーデター、つまり右翼的暴力革命を訴えますが、その言葉が届かなかったため自決するのでした……。

 

【感想とまとめと豆知識】

 

三島由紀夫の肉体へのこだわりとセクシャリティ
三島は当時の作家としてはめずらしく肉体に注目し、ボディビルや武道に励んでいたようです。
「フランス語の単語を3万語記憶しているのと、胸囲が100センチあるのとではどっちが偉いかわからない」と言ったほど、マッチョに憧れがあったそうです。


またこの映画では触れられていませんでしたが、三島がホモであったことは有名です。
結婚して奥さんがいましたので、現代のLGBT基準に照らし合わせるとバイセクシャルになります。
歌手・俳優の美輪明宏さんとのロマンスは当時から有名だったそうです。
以上、浅いにもほどがある豆知識でした!

 

『三島の市谷駐屯地立てこもり事件が失敗したのは決行する時間を間違えたから!?』
自衛隊員たちに暴力革命を起こすよう扇動した三島ですが、当時、駐屯地は昼休憩時間で、集められた多くの隊員たちは「昼飯が食えないこと」に腹を立ててろくに演説を聞いていなかったそうです。
以上、浅いにもほどがある豆知識2でした!

 

『虚勢のかたまりの、芥のキャラが最高!』
最初のうちはなにを言っているのかさっぱりわかんなくてムカつきましたが、だんだんそのわからなさが癖になっていきました。
赤ちゃんを連れて登場したり、他の学生よりおしゃれだったり、自分語を連発したり、途中で帰っちゃったりと、もうやりたい放題で、三島も圧倒されていたのが印象的です。


年をとってもまったく丸くなっていなかったのには爆笑しました。
「あなたたち、なんかごちゃごちゃ言ってましたけど、結局、共産主義革命闘争に敗北しましたよね?」
とTBSのインタビュアーに煽られたとき、ほかのおじいさんたちはもごもごと歯切れの悪い言い訳をしていたのに、芥は「それは君の国の話だろう?俺の国では敗北とは言わない。なぜなら俺が生きてるのが証拠だ!」などと相変わらずわけのわからん理論をごり押ししていました。


マジでなに言ってるかわかんねー(笑)
あの~他人に理解させるつもりがなかったから失敗したんじゃないですかね~(無慈悲な核心)


ちょっとマジメな話をしますと、驚いたことに全共闘のみなさんがだれも「革命闘争に敗北した」ことを認めませんでした。


この映画のなかで「三島は戦争で死ななかったことに罪悪感を抱いていた」と分析されていましたが、全共闘のみなさんも「革命闘争に殉じずにのうのうと生きていることに罪悪感を抱いている」と対比されていました。


まあ、あくまで製作者がインタビューを切り抜きした一方的な見解なので、正しいかどうかわかりませんが、みなさんが革命闘争の総括のときに歯切れが悪かったのは確かです。
芥を除いて!


芥だけは自信満々、罪悪感ゼロです。

やっぱ芥が最高なんだよな~。

討論会のとき、壇上にデカくて強そうなやつが上がってきたときにめちゃくちゃビビッてたのが最高に小物ぽくておもしろかったです(笑)

 

暴力革命を標榜していた全共闘の東大生は、戦闘力が低かったせいで、虚勢を張るしかなかったようです。

ようですというか、会場にいた学生はすげー弱そうでしたし。

実際に機動隊などと戦闘していたのは「マルクスの本なんて読んだことないし、頭は悪いけど、ケンカのできる早大生や名大生だった」と宮崎学の『突破者』に書いてありました。

嘘かほんとかわかりませんが、実際、この映画に出てきた楯の会の会員は早大生だらけでしたし、この本はファンタジーみたいでおもしろかったのでおすすめです。


というわけで、非業の死を遂げた文豪三島由紀夫よりも、1学生の芥のほうが目立っていたドキュメンタリーでした。

「殴らせろ!」と言って強そうなやつが壇上にあがってきたときの芥のビビリっぷりはマジで必見です!


三島の生首写真とかを出さなかった上品さはおおいに評価したいと思いますが、どこらへんが「禁断のスクープ映像」なのかはちょっとよくわからなかったです。

死ぬまで中2病を貫く芥に憧れざるを得ませんでした!


以上です。