『ものがたりいちば』

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「500ページの夢の束」の感想

人の可能性を他人が勝手に過小評価すんな!という結論。

 

ロマンチストにおすすめです。
ネタバレ憲法違反案件ではありません。

冒頭の文章がややネタバレですが、過程を楽しむ作品です。

 


2018年アメリカ映画。
なんらかの障害を抱えた女性が、自分の書いた最高の脚本を届けるためにロサンゼルスのパラマウントスタジオまで旅するロードムービー


障害者が旅するロードムービーは、それほど珍しくないと思います。
レインマン」「ザ・ウィザード」など。


監督はベン・リューイン(知らない)。
主演はダコタ・ファニング(超知ってる!)。

 

びっくりしました。
なにしろ、主人公のウェンディ(21歳)の顔はどっかでみたことあるなーと思っていたのですが、エンドクレジットで名前をみるまではダコタ・ファニングとはまったく気づきませんでした。


演技うますぎじゃね?


ダコタ・ファニングといえば「アイアムサム」などで全世界であっという間に大人気になった超絶美少女子役です。


「アイアムサム」では、知的障害を抱えたパパと二人で暮らすために世間や法制度の偏見と闘う、聡明な美少女を演じていました。演技うますぎでした。そしていまも演技うますぎです。

 

 

・あらすじ
主人公のウェンディは21歳の健康な女性ですが、精神的になんらかの問題を抱えていて、施設暮らしです。

 

作中では最後まで病名を明言していません。
本人は「かんしゃく持ち」と申告しています。


感情が高ぶると、他人の話を聞かなくなり、奇声を発したり暴れたりしますが、他人を傷つけるほどは暴れません。


毎日目覚めてからすべての行動をメモのとおりに規則正しく動かなきゃいけないほど、なにもかもを恐れています。


施設住まいですが、ちゃんと仕事もしており、ショッピングモールのドーナツ店で働いています。


なぜ施設に住んでいるかというと、シングルマザーの母が亡くなって、そのあと面倒を見てくれた妹が結婚して子供が生まれ、まあはっきり言って子供の世話で忙しくて邪魔になって追い出された形です。

 

子供に危害を加えかねないと妹が思ったのでしょう。

姪に会わせてもらっていません。


ウェンディは、熱烈なスタートレックオタクで、脚本コンテストに参加するために、昼も夜も脚本作りに没頭しています。


500ページにも及ぶ壮大なストーリーの脚本を、たった一人で書き上げたのです。
いやもう、すごい。すごくない?すごいでしょ!


でも、施設の責任者であるスコッティさんも、姉も彼女の才能や人間性には目もくれません。


だって、障害者だから。


世間から隔離して、保護(という名の監禁)をしなきゃいけないんだから!
偏見のかたまりです。


ですが、問題を抱えたひとと密接にかかわっているひとほど、そういう気持ちになるのかもしれません。


この「気の毒な子」は、放っておくとあっという間に事故とか事件に巻き込まれて死んじゃうんじゃない?って感じで。

 

たしかに、ウェンディは健常者なら、意識せずにできることができないのです。


何度も何度もチェックして、推敲を重ねて、500ページ近い大作を書き上げたのに、脚本コンテストの締め切りに間に合うように郵送することすらできなかったのです。

頭のなかで優先順位を処理できないのです。


脚本の受付締め切りは火曜日の午後5時。
気づいたときには日曜の0時過ぎ。

 

日曜には郵便物の収集はなく、そして月曜は祝日。
絶対に間に合いません。


彼女は、自分でロサンゼルスまで旅してパラマウントスタジオに原稿を直接持ち込むことに決めるのでした。


なんという熱意……。

ただ、問題がありました。


ウェンディは、路線バスと長距離バスのちがいすら知らなかったのです。
なぜなら――だれも教えてくれなかったから。
彼女を社会生活で無能と決めつけた周囲のひとのせいで。


皮肉なことに、その決めつけは彼女を守るためという善意に端を発していたのです。

 

さあ、ウェンディは心血注いで書き上げた脚本を届けることができるのでしょうか?
ウェンディは、なんのために危険な旅路に身を投じたのでしょうか?
だれに脚本を読んでほしかったのでしょうか?


それはご自分の目でご確認ください。
いい映画です!