『ものがたりいちば』

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映画「ハリエット」あらすじ付きネタバレ感想

2019年アメリカ映画
監督:ケイシー・レモンズ
主演:シンシア・エリヴォ

黒人奴隷から生まれた救世主!

 目次です。好きなところから読めます。

 

序盤のあらすじ


1849年アメリメリーランド州
奴隷として生まれた黒人女性ミンディは、夫のジョンとともに農場の奴隷主に「もし自分が子どもを産んだらその子に自由を与えてほしい」と直談判します。
というのも夫のジョンは自由黒人ですが、奴隷が産んだ子はやはり奴隷の身分になるからです。
夫婦はそのせいで子どもを作らずにいました。


ところが、弁護士に調べてもらったところ法的には『ミンディの子どもは自由黒人になる』ということがわかったのです。
そういうわけで子どもを作る前に主人に確認を取ったのですが、奴隷主は「おまえもおまえの子どもも俺の所有物だ」と弁護士の手紙をビリビリに破いてしまいました。


悲嘆にくれるミンディは奴隷主の魂を呪うように神に祈りを捧げます。
心の中で願うのではなく声に出してしまったため、奴隷主の息子ギデオンに聞かれてしまいました。
ギデオンは「神は黒人の祈りを聞かない」と言いましたが、その後奴隷主がぽっくり死にます(笑)


本当に呪いをかけたと怖がったのか、それとも怒ったのか、ギデオンはミンディを南部へ売りに出すことにしました。
アメリカの北東部に位置するメリーランド州ならともかく、南部からでは奴隷制のない北部に逃げることは不可能になってしまいます。
ミンディは夫のジョンとともに逃亡することを決意しました。


農場を去る前に母に別れを言いに行くのですが、なぜか言葉ではなく歌で伝えようとします。
このメッセージを察した母も歌で応じます。
南米の奴隷は白人に『武術の訓練をしている』とバレないように、ダンスっぽい格闘技カポエイラを生みだしましたが、この歌も白人に気づかれないようにカモフラージュしているのでしょうか?


母と父との別れを済ませたミンディは農場を出て教会に立ち寄り、黒人牧師から「森を川まで進み、橋を越えて北の港町に行き、鍛冶屋に会え」アドバイスを受けます。
その通りにするミンディでしたが、こちらは徒歩、対する追跡者は馬に乗り猟犬に匂いを追わせているのです。
橋でギデオンに追いつかれ、両側から挟み撃ちにされました。


川は急流ですが、それでも飛び下りようとするミンディに、ギデオンが「自殺は神への冒涜だぞ」と脅します。
しかし、脅しが効かなかったのでギデオンは「おとなしく戻ればなにもしない」と甘い言葉で説得しました。
ミンディは「自由か、死か」と毅然と言い放ち、急流に飛び込むのでした。


ギデオンたちは川岸を捜索しましたが、川でミンディの匂いが消えてしまっているため猟犬も追跡できず、『溺れ死んだ』と判断して去っていきます。
ところが、ミンディは生きていました。


体は傷だらけ、服もボロボロですが、干し草を運ぶ馬車にこっそり乗りこみ北を目指します。
じつは馬車の御者はミンディが干し草に潜んでいることを気づいており、町に近づくと「ここで降りるんだ」と言いました。
この御者は白人なのに、なぜミンディに協力したのでしょうか?


困惑しながら港町についたミンディは黒人の船頭に鍛冶屋の居場所を尋ねます。
船頭はボロボロでどう見ても逃亡奴隷の身なりを見て、上着をかけてくれて、鍛冶屋の場所を教えてくれました。
言われた通り鍛冶屋に会って助けを求めるのですが、鍛冶屋もなぜか白人です。


こうしてミンディは無事目的地である自由の町フィラデルフィアにつくと、鍛冶屋から教えられた反奴隷協会に行きウィリアムという自由黒人に会いました。
ウィリアムはミンディが160キロも1人で逃げ切ったことを『奇跡』と評します。
ミンディは逃亡奴隷のリストを作っているウィリアムに自分の詳しい素性を話しました。


子どもの頃に奴隷監督に殴られて頭蓋骨が割れたこと、そのせいで睡眠発作を起こすようになり神の声が聞こえるようになったこと、などを語りますが、ウィリアムには『脳に後遺症がある可能性あり』と書かれてしまいます(笑)
自由になった記念に新しい名前を決めることになり、ミンディは母の名前であるハリエットを選びました。


ウィリアムはハリエットを黒人女性専用の下宿に連れて行き、マリーという下宿主と引き合わせました。
マリーはゴージャスなマダム風の女性で、ハリエットを歓迎します。
しかしちょっとしたシャレのつもりで「動物みたいに臭いから風呂に入って」と言ってしまい、カチンときたハリエットに「自由黒人として生きてきたあなたには逃げる恐怖も臭いも理解できない」と言い返されてしまいました。


こうしてハリエットは様々な人に助けられながら、ついに生まれて初めて自由を手に入れたのです。

 

 

止まらないハリエット


マリーに紹介してもらったメイドの仕事をしているうちに1年が過ぎました。
自由を得て、きちんと給料を払ってもらえる仕事にもつけたのに、ハリエットは幸せを感じません。
夫や家族のいないフィラデルフィアでの生活がかりそめのもののように感じてしまったのです。
また、知り合いの船頭に夫への伝言を頼んだのですが、返事がないことも気になります。


そこで家族を救うために農場に戻る決心をして、ウィリアムに助けを求めますが「君自身と組織が危険に晒される」と断られます。
もしハリエットが捕まれば、反奴隷協会のアジトがバレて、他の逃亡奴隷も危うくなるからです。
しかしそんなことは知ったこっちゃありません。


ハリエットは次にマリーに助けを求めます。
するとマリーはハリエットに身なりのよさそうなドレスを与え、自由黒人っぽい作法を教え、さらに銃をくれました。
さっそくハリエットは汽車に乗ってメリーランドに戻り、農場に侵入します。


夫のジョンに再会するのですが、なにか様子がヘンです。
じつは『ミンディ(ハリエット)が溺れ死んだ』と聞いたジョンは別の女性と結婚していたのです。
しかもその女性は『子どもも自由黒人になれる』自由黒人でした。


ジョンとのことは残念でしたが、ハリエットにはまだ家族を救うという目的があります。
父には『心を病んだ母と残る』と言われたので、弟たちや奴隷仲間を連れていくのですが、老人も赤ちゃんを連れている女性もいます。
赤ちゃんを連れた集団を160キロ北のフィラデルフィアまで連れて行く、これは最初の逃避行よりもはるかに困難な試みです。


しかも逃亡するところをウォルターという自由黒人に目撃されました。
ウォルターが金欲しさにギデオンに告げ口したために、追跡者に追い立てられながら一行は進んで行きます。
前回の失敗を反省したのか、ギデオンはウォルターに優秀な奴隷狩りビガー・ロングを紹介してもらい、追跡力を増強しました。


ビガーは黒人でありながら奴隷狩りをやっており、高額の報酬を何に使うのかとギデオンに聞かれて「白人の売春婦を買いまくる」と言ってのけるほど大物感が漂っています。
追跡者たちはビガーの指示でハリエットたちを川のそばに追いこみ、唯一の橋で待ち伏せをしています。


逃亡奴隷たちは追い詰められ、おまけに先導者のハリエットが睡眠発作を起こしてその場で眠ってしまいました。
幸いにも短時間で目覚めたハリエットは「神の声を聞いた」と言って橋に向かおうとせず、川を歩いて渡ろうと提案します。
これには仲間たちもびっくりです。
奴隷として生まれ育ったので泳げる者がいないのです。


不安に駆られて動こうとしない仲間たちの前で、ハリエットは1人川に入って行きました。
誰もが無謀だと見守るなか、身長150センチしかないハリエットは顔が1度も水面につくことなく渡り切ったのです。
仲間たちは奇跡的な光景に驚き、後に続きました。


そのすべてを樹上から見張っていたウォルターも奇跡に胸を打たれたのか、ギデオンに「見失った」と報告しました。
こうしてハリエットは家族や友人を見事に救い出し、フィラデルフィアに連れて行きました。


1人も脱落させることなく帰還した奇跡にウィリアムが感動して、ハリエットを秘密の場所に案内します。
それは『地下鉄道』という秘密結社のアジトでした。
地下鉄道は奴隷逃亡を手助けする黒人と反奴隷主義者の白人で構成されていて、かつてハリエットが逃亡したときに助けてくれた人々はこの結社のメンバーだったのです。


ウィリアムはハリエットを正式なメンバ―として迎え、『車掌』という役職を与えました。
乗客を安全に目的地に送り届ける重要な役職です。

 

 

奴隷狩り法


本格的に奴隷救出活動を開始したハリエットは次々と農場から奴隷たちを救いだしていきます。
白人奴隷主たちはハリエットを憎み、懸賞金をかけます。
最初は125ドルだった賞金は、すぐに300ドルにまで引き上げられ、ハリエットは『奴隷泥棒モーゼ』として名をはせるのでした。


やがてハリエットが現れて歌うだけで、事情を察した奴隷たちは一目散に逃亡するようになっていきます。
多くの同胞を救ったハリエットですが、気がかりなのはまだ農場に残っている妹のことです。
妹は農場主のエリザに監視されていて救出は困難なのですが、それでもハリエットは救いに行きました。


ところが妹はエリザに自分の子どもを人質に取られていて、逃亡を拒みます。
仕方なく退散しようとしたハリエットは、追跡者のウォルターに見つかってしまいました。
ウォルターは『神の声が聞こえる』ハリエットに心酔していて、他の追跡者から逃れる手助けをしてくれました。


ハリエットはそれからもフィラデルフィアを拠点に奴隷たちの逃亡を支援していましたが、ある日状況が一変します。
連邦議会で『奴隷狩り法案』が成立してしまったのです。
この法により奴隷制のない州でも逃亡奴隷を狩ることが可能となってしまいました。
逃亡奴隷は隣国のカナダに逃げるしかなくなり、波止場から北行きのフェリーに乗りこんでいきます。


逃げるハメになったハリエットはその前に恩のあるマリーに別れを告げようとするのですが、マリーは法案の成立を受けてフィラデルフィアに乗りこんできたギデオンとビガーに暴行を受けていました。
ハリエットの居場所を吐かせるためです。
結局マリーは口を割ることをなく息絶え、失意のうちにハリエットはフィラデルフィアを去り、カナダに移住しました。

 

 

自由か死か


しばらくカナダで平穏に暮らしていたハリエットですが、妹の死を知り、NYで行われる『地下鉄道』の会議に参加しました。
法案成立後奴隷狩りが激しさを増していて、逃亡奴隷を助けることが難しくなっているようです。
なにしろメリーランドからカナダの国境までは1000キロもあるのですから。


「逃げてばかりでは先がない」と戦争を望む声が上がり、会議はその方向に流れかけます。
しかしハリエットが感動的な演説でその流れを止め「わたしは必ずやり遂げる!」と宣言して、メリーランドへ向かいます。
そして1000キロという長距離を踏破して奴隷たちをカナダに逃がしたのです。


ここら辺から展開が雑になってまいります。


こうして地下鉄道の活動に復帰したハリエットはある朝、父親に魔の手が迫っている夢を見ました。
さっそく故郷に戻り、信奉者のウォルターに情報を探らせると、ハリエットの父が逃亡奴隷を匿った罪で逮捕間近ということがわかりました。
すぐに父と母を脱出させ、妹の子どもや他の奴隷たちもついでに逃亡させることにしました。


いっぽうそのころ奴隷主のエリザとギデオンの母子は追い詰められています。
2人の奴隷だったミンディが奴隷泥棒モーゼだったことが明らかになり、他の奴隷主から損害賠償を求められたのです。
エリザが自分たちも被害者だからともにあの悪魔を捕まえようと演説したので、奴隷主たちによる捕獲部隊が結成されました。


かつてないほどの奴隷たちを連れているハリエットたちは、手始めに馬車を襲い、足を確保します。
捕獲部隊はいつものように橋で待ち伏せをしているのですが、たまたま白人のように肌の白い奴隷が仲間にいたのでハリエットたちはからくも検問を突破しました。
ギデオンとビガーだけがそのことに気づいて追跡してきます。


奴隷たちをウォルターに託し、ハリエットはギデオンと対決することにしました。
ビガーがハリエットを撃ち殺そうとしたしたため、ギデオンがビガーを撃ち殺します。
なぜならギデオンは子どもの頃から意思の強いハリエットが好きだったからです。
ハリエットはギデオンの手を撃ち「これからはわたしたちの時代が来る」と言い放って北へ去りました。


それから南北戦争が勃発してから2年後、ハリエットは北軍の黒人部隊を率いて奴隷主たちと戦い、逃亡奴隷たちを救うのでした……。

 

 

ワープ度☆☆☆☆☆


160キロ離れた故郷の農園に何度帰ったことか(笑)
最初の逃避行でも途中からかなりワープ気味にフィラデルフィアについてましたが、後半になるにつれてワープが目立つようになっていきます。

 

 

ちょっと盛ってる度☆☆☆☆☆


とくにニューヨークの会議で演説して戦争を止めるところは嘘くさいというか、キャラのブレを感じました。
ハリエットはむしろ『奴隷を救うためなら戦をいとわない』くらい性格の強いキャラだと認識していましたので……。
身を挺して奴隷を助けて、戦争の可否にも影響を与えて、と功績を盛ろうとするスケベ根性に思えてしまいました。

 

 

ギデオン他奴隷主無能度☆☆☆☆☆


この映画は単純な勧善懲悪の物語で、奴隷主がただの敵役にしか描かれていませんから、べつに無能でも構わないんですけど、ギデオンがハリエットを子どもの頃から好きだった設定はおかしいと思います。
なら、なんで南部に売ろうとした(笑)
あと大物感たっぷりで登場してクソの役にも立たなかったビガーなんだったんすかアレ(笑)

 

すごい人もいたもんだな~と感服しましたが、ちょっと展開が雑だなと感じる場面もありました。
以上です。