『ものがたりいちば』

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「特捜部Q カルテ番号64」の感想

 過去の亡霊は死んでいなかった……。

 

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2018年デンマーク・ドイツ合作映画。

ジャンルはサスペンス。


監督はクリストファー・ボー。
主演はニコライ・リー・カース。

 

人気シリーズの映画化4作目。(管理人は本作が初見です)
ネタバレはアウトです。恨んでいいレベルです。
微グロシーンがあります。ご注意を。

 

 

・序盤のかんたんなあらすじ


舞台はデンマークコペンハーゲン
コペンハーゲン警察には未解決事件を専門に扱う「特捜部Q」という部署がある。
そこに属する刑事コンビのカールとアサドは、新たな事件に直面する。


建設作業員がアパートの一室の壁を壊したところ、そこから3体のミイラ化した死体が見つかったのだ。


生殖器が切り取られている死体もあり、明らかに猟奇殺人の証拠なのだが、なによりも異常なのは死体たちがテーブルにつかされ、まるでディナーを囲んでいるかのように並べられていたことだ。


さっそく捜査を開始したカールたちが情報を集めていくうちに、被害者たちの共通点が浮かび上がっていく。


被害者たちはスプロー島にかつて存在した「女子収容所」の関係者だったのだ。


女子収容所は非行少女を強制的に収容し、違法行為が行われていたと噂がある曰くつきの施設だ。


捜査はある時点まで順調に進むのだが、ある高名な医師を疑い始めたとたん、事件は新たな展開をみせる。


情報提供者が襲われたり、カールたち警察官まで何者かに襲われたりしはじめたのだ。
カールはこの事件の裏には個人ではなく、組織による巨大な陰謀が潜んでいると確信する。


その確信は当たっており、事件の原因は1971年のある出来事が影響しているのだった……。

 

 

 

――ネタバレ注意!――

 

 

 

バディムービー度☆☆☆☆☆
物語開始直後、アサドはべつの部署への異動を一週間後に控えています。
5年もコンビを組んできた先輩刑事のカールは引き止めもしません。

アサドはそのことを不満に思っています。


カールという男は事件以外ぜんぜん興味がなく、他のことには淡泊です。
アサドはそんなカールに反発していますが、刑事としては尊敬しており、本心ではもっといっしょに仕事をしたいと思っています。
そんな関係性が、事件捜査を通じて変化していくのも見どころです。

 

 

 

現代に息づく邪悪な思想の怖さ度☆☆☆☆☆


原作は小説なので、ノンフィクションではありませんが、歴史的事実を元にして事件を作り上げています。
ほんの数十年前に、現代の基準では人権無視というしかない邪悪な行為がまかり通っていたのです。


猟奇殺人というだけでも恐ろしいですが、事件の裏にある陰謀の恐ろしさはそれをはるかに凌駕しています。


終盤、すべての真相を知ったカールは、本来なら罰されるべき人物を見逃すのですが、それも納得できるほどの巨大な陰謀でした。
ただ事件を捜査するだけでは終わらない、展開の変化がとてもおもしろい作品です。

 

 

 

現代によりそったテーマ度☆☆☆☆☆


歴史をネタにしたサスペンスですが、テーマは非常に現代的です。
デンマークは移民受け入れを積極的に行っていることで有名で、とくに中東からの移民が多いそうです。


「うちの近所にまたムハンマドさんが引っ越してきたよ」というエスニックジョークがあるほど、イスラム系の移民は日常的のようです。


当然、人種間対立や差別問題が起こらないわけがありません。
現代の問題と歴史的過ちをうまく融合した、社会性の高い良質サスペンスです。

 

ストーリーがおもしろいし、70年代の北欧女性のファッションがめちゃくちゃ好みでした!