『ものがたりいちば』

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「ボヘミアン・ラプソディ」の感想

ロックスターが自分で人生を台無しにしていく、いつものロック伝記映画――と思いきや?

 

 

2018年イギリス・アメリカ合作映画。ジャンルは伝記。
監督はブライアン・シンガー
主演はラミ・マレック


ネタバレはゼッタイダメ!

フレディ・マーキュリーが死ぬとかゼッタイ言っちゃダメ!

 

え?


冗談はともかく伝記映画ですので、ネタバレもクソもありません。
はじめに申しておきますと、管理人はベストアルバムを持っていますがクイーンのファンではありません。


なんか楽曲の構成がよくできすぎていて、苦手なんですよね……。
クイーンというバンドへの思い入れがぜんぜんないので、多少引いた視点からの感想ということをご了承ください。

 

 

 

・序盤のかんたんなあらすじ
1970年ロンドン。
移民の青年ファルークは、夜な夜なライブハウスに入り浸っていた。
そこで目にした「スマイル」というバンドに興味を持ち、自分を売り込む。


たまたまヴォーカルが脱退した直後で、新しいメンバーを探していたギタリストのブライアン・メイとドラマーのロジャー・テイラーはファルークの歌声を聞いて加入を即断した。さらにジョンという新しいベーシストも加入した。


新バンドの名前はファルークの提案で「クイーン」になった。


ゾロアスター教をルーツにもつことを嫌がっていたファルークはバンド名と同じく、自分の名前も「フレディ・マーキュリー」に改名する。
フレディは一目ぼれしたメアリーと恋愛関係になる。


アルバム作りに着手したクイーンをEMI(レコード会社)のジョン・リードが見つけて契約する。


クイーンはまたたく間にスターダムにのし上がり、ツアーで世界を渡り歩くことになる。
同時期、フレディはメアリーと結婚する。

まさに順風満帆、前途洋々である。


斬新な新アルバムも完成しヒット、ロック界での存在感を着実に増していくころ、フレディはある問題を抱えるようになっていた。


それは、自身がバイセクシャルかもしれないという悩みだった。
すでにぎくしゃくし始めていたメアリーにそのことを告げても、メアリーは驚かなかった。
それどころか「ちがう。あなたはゲイよ。ずっと気づいていた」と言われてしまう。


メアリーが去り、バンドメンバーとも仲たがいが増えていく。
孤独を深めるフレディは酒やドラッグに溺れ、不特定多数の相手と乱れた生活を送るようになっていくのだった……。

 

 

 

――いちおうネタバレ注意!――

 

 

 

ロックスターだいたい同じ落ちぶれかたしてる説☆☆☆☆★
急激にスターダムへ駆け上がり、金目当ての取り巻きに惑わされ、親友や仲間を遠ざけて孤独になり、酒とクスリに溺れていく……だいたいこんなコースです。

この映画もだいたいこんなコースです。


オリバー・ストーン監督の「ドアーズ」もだいたいこんなコースでした。
だいたい、ですけど、すべて同じではありません。


ドアーズのジム・モリソンが薬物の過剰摂取で死んだのとちがって、フレディは自分を取り戻し、見事に復活を遂げます。
だからこそ最後のウェンブリーでのコンサートが感動的になるのでしょう。

 

 

 

そりゃゲイでしょ度☆☆☆☆☆
メアリーを演じるルーシー・ボイントンがめちゃくちゃキュートなので、彼女といることよりもヒゲのおじさんと過ごすことを選んでる時点でゲイだと誰の目からも明らかです。

 

仲間のロジャーにもわりと早い段階で「ゲイっぽい」と指摘されてます。
それでも時代は70年代。


イギリスは60年代まで同性間の性行為が違法でした。19世紀まではなんと死刑だったそうです。


我が国では歴史上、同性愛が違法だった時期はわずかだったようです。
キリスト教圏か、そうではないか、ということが大きく影響しているみたいですね。


いくら違法ではなくなっても、当時の社会は確実に現代よりLGBTに無理解だったことでしょう。
うすうす気づきつつも認めたくない、そういう気持ちがフレディにあったから、結婚するまで気づかないフリをしていたのではないでしょうか。

 

 

 

これだけは知っておいてほしい度☆☆☆☆☆
映画では、自分を取り戻したフレディがライブエイドコンサートの直前にジム・ハットンという男性を探し出し、恋愛関係が始まるところで終わっています。


ラストのテロップで「ジムは晩年のフレディを死の間際まで手厚く看護した」と表記されます。
しかし、この感動エピソードにはある事情で語られていない事実があったのです。


それはジム自身も(おそらくフレディ由来によるものと思われる)エイズに感染した、ということです。


これを書いてしまうと、感動の余韻に浸っている観客が冷や水をぶっかけられて冷めてしまうことを制作サイドは懸念したのでしょう。
ですが、管理人はむしろ感動しました。


ある意味フレディのせいで感染したのに、ジムは生前のフレディにそのことを告げなかったそうです。
もし自分も感染したことを伝えれば確実にフレディが責任を感じて苦しむと思ったからでしょう。
なにも言わずに献身的に看病し続け、死を看取った――これが愛ですね、愛!


自分が同じ立場だったら、と考えると、とても同じ行動ができたとは思えません。
というか、ぜったい八つ当たりします。
ジム・ハットン、あんた漢だよ!

 

途中まではいつものロック伝記ものとほぼ同じ流れですが、さすがの大ヒット作。
LGBTなどのテーマをきちんと取り上げた非常に現代的な映画でした。
クイーンファンはもちろん、そうではない管理人でもじゅうぶんに楽しめる良作です!