『ものがたりいちば』

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ドキュメンタリー映画「一人っ子の国」ネタバレあらすじ感想

2019年アメリカ映画
監督:ナンフー・ワン:ジアリン・チャン

恐るべき陰謀論を描いた驚愕のドキュメンタリー風映画!

※この映画で描かれる内容が事実かどうか、わたしは保証しかねます。

 目次です。好きなところから読めます。

 

序盤のあらすじ


1979年、国民が10億人を超えて人口爆発を懸念した中国共産党は、各家庭が子どもを2人以上持つことを禁止する政策『一人っ子政策』を施行しました。
1982年には憲法に明記され、この政策は2015年に廃止されるまで継続されました。


1985年に中国で生まれ、現在はアメリカ在住のナンフー監督は、自身に子どもが産まれたことをきっかけにこの政策に興味を持ち、当時のことを聞くために故郷の村に帰ります。


一人っ子政策の真っただ中に生まれたナンフー監督には5歳下の弟がいます。
地方の農村部では5年の間をあければ2人目の子どもを生むことが許可されることもあったそうです。
しかし、この弟は場合によってはこの世に存在しなかったかもしれません。


母がナンフーを生んだ直後に、一人っ子政策の推進を担う『生育計画委員』がやってきて、無理やり不妊手術を受けさせようとしたのです。
祖父が闘って阻止したおかげで弟は生まれることができました。
そこでナンフーはまず当時の村の生育計画委員に話を聞きに行くことにします。

 

 

村の人々へのインタビュー


生育計画委員とは、一人っ子政策を推進する役人ですが、まず役職名が間違ってますね。
生育阻止委員と定めるべきだったでしょう(笑)


当時の委員がまだ存命で、ナンフーのことを覚えていて、インタビューに応じてくれました。
委員は政策に違反した家族の家を壊したり、不妊手術を強要したことについて「ひどいことだった。心が痛んだ。しかしそれでも上からの命令だからやるしかなかった。仕事だから仕方ない」と語ります。


ナンフーは不妊手術を強要された女性に話を聞きたいから、だれか紹介してくれないかと元委員に頼みますが、それはさすがに拒否されました。


つぎに自分を取り上げてくれた助産師に話を聞きに行きます。
助産師は「自分が取り上げた子どもの数は覚えていない」と語り「でも、不妊手術や中絶手術を5万件以上やったことは覚えている」とも語りました。
罪悪感から数を数えていたそうです。
この助産師は当時のことを振り返り、はっきりと「悪事だった」と明言しました。
罪を償うために今は助産師をやめて、不妊治療に携わっているのです。

 

助産師がなぜ不妊治療をできるのかは、中国の医療制度を知らないのでよくわかりませんでした(笑)

 

 

村の外へ


ナンフーは地元の村をはなれ、もっと大物の委員に会いに行きました。
この委員は女性ながら数々の実績を上げ、当時の国家主席江沢民に表彰されたほどです。
ということは多くの家を壊し、不妊手術を強要したわけです(笑)


「ひどいことだとは思ったが、必要な政策だったから仕方ない。人口戦争に勝つための正しい政策だった」と振り返り、もう1度当時に戻っても同じことをやる、と語ります。
最後にこの元委員は「あの政策のおかげで今の中国がある。先見の明があったのね……」と目をキラキラさせるのでした。

 

当事者の話を一通り聞いたので、つぎにナンフーが会いに行ったのは謎の芸術家です。
芸術家は自身が出版した本の365ページすべてに胎児の絵を描き、胎児殺しが日常的なものだったことをアピールしました。
当時多くの人が共産党プロパガンダで洗脳されていたと語ります。


CM、歌、演劇、舞踊、パッケージの写真、街頭に掲げられたスローガンなど、多くの宣伝によって『一人っ子政策が素晴らしい政策』で、『共産党が素晴らしい政府』だと刷り込んでいたのです。
その芸術家はかつてゴミをテーマにした写真を撮っていたただの変人で、あるときゴミ捨て場で袋に入った胎児の死体を見つけたそうです。


『医療廃棄物』と記されたその胎児入りの袋の数は、1つや2つではなかったのです。
最後に芸術家が拾ってきて、ホルマリンに漬けて保存している胎児の死体が映されました。
やっぱり変人じゃねーか(笑)

 

 

男児と女児の違い


ナンフーはふたたび村に帰り、家族に話を聞きます。
すると驚いたことに不妊手術を強要されかけた母が政策を「当時は仕方なかった」と肯定しました。
さらに母は「もしおまえの弟が女だったら、今ここにはいなかった」と、とんでもないことを言い始めたのです。


かつて母のために戦った祖父も「女の子どもはいらん。男じゃないと家が断絶する」と同意見です。
生活が苦しかったナンフーの母は、弟を学校に通わせるために、ナンフーに学校を辞めさせて働きに行かせました。


当の弟は家族がみんな姉のナンフーより自分を大事にすることをずっと悲しいと思ってきたそうです。


かつてある親族が女の子を生み、男の子を望む家族の希望(2人目の子を持てないから)で、その子をバスケットに入れて市場に捨てに行ったそうです。
しかしだれにも拾われず、2日後にその子は死にました。
『男が家を継ぐ』という伝統と『子どもは1人だけ』という政策が噛み合ったために発生した殺人です。


家族に話を聞いているうちに、ナンフーは自分にいとこがいたことを初めて知りました。
女の子を生んでしまった叔母夫婦は、いらないけど死なせるのが忍びなくて、知り合いの業者に頼んで養護施設に送ったそうです。

 

 

驚愕の人身売買システム


ナンフーはその人身売買業者に会いに来ました。
家族ぐるみで赤ちゃんを売買していた業者は、当時のことを「偶然始まった」と語ります。
業者の母が拾った赤ちゃんを育てていたのですが、生活が苦しくて手放すことに決め、養護施設に持っていくと、なんと115ドルももらえたのです。
さらに多くの赤ちゃんを連れてくるようにと言われたため、一家の人身売買が始まったのでした。


なぜ養護施設は赤ちゃんを高額で買い取り、そしてその赤ちゃんはどこに行くのでしょうか?
答えは『外国人に養子として売る』です。
ちなみに養護施設は国営です。
国家ぐるみの人身売買(笑)
さあ、闇がどんどん濃くなってまいりました!

 


というわけでナンフーはアメリカへ戻り、このシステムでアメリカに売られた子どもと実の家族を結びつける『リサーチ・チャイナ』という活動をしている夫婦に会います。
ちなみにこのサービスは有料です、慈善活動家ではありません。

何年間も有意義な活動をしているのに、スタッフが増えていない営利団体という設定を念頭に置いておいてください。


ブライアンとランの夫妻は自身もこのシステムを利用して3人の子ども(全員女の子)を中国から引き取ったそうですが、当時は『拾われた孤児』だと説明されていたそうです。
しかし、そのことに疑問を持ったランが中国に飛んで拾った人に聞くと「拾ってない。施設に勝手に名前を使われただけ」と返されました。


さらに調査を進めると、施設側が警察に金を払って『赤ちゃんは拾われてきた孤児』というお墨付きを得ていたことがわかりました。
まあ国家ぐるみの人身売買システムだったとすれば当然のことでしょう。

そうじゃないとつじつまがあいません。
ここで問題として浮上するのは『赤ちゃんが孤児ではないなら、誰の子か?』ということです。

 

 

国家ぐるみの拉致誘拐


ナンフーはこの問題について記事を書き、当局にマークされたため香港に逃亡している記者に話を聞きます。
※この設定が事実と仮定すると、香港で『国家保安法』が施行される以前の映画ですので、現在は逮捕されたか、べつの国に逃亡していると思われます。


記者は中国でも最貧クラスの貧しい村で起こったことを語ります。
ある家庭に2人目の子どもが産まれると例の生育計画委員がやってきて、子どもを連れ去り養護施設に送ります。
『返してほしければ2000ドルの罰金を払え』と通達がきます。
2000ドルなので日本円に換算すると20万円以上です。


貧しい家庭が払えるわけもないので、子どもは外国人に養子として売られるそうです。
こうして自治体に拉致、誘拐されて売られた子どもは記者が取材して把握しているだけでも20人いるそうです。
なんだかもうわけがわからなくなってきましたが、21世紀の話です(笑)


リサーチ・チャイナのランが、こうして連れ去られた子どもと実の家族をDNAで突き止めて、アメリカで養子として暮らす子どもに「実の家族を知りたければ返信をくれ」というメールを送りました。
ところが、その子どもは「知りたくない」と返信してきたのです。
こういうことはよくあることのようです。


現在の暮らしに満足していて、今の両親を『実の親』として愛している子どもからすれば、記憶にもない家族との接触を望む理由がないからでしょう。
養子という立場からすれば、実の両親と接触したせいで今の両親との関係がこじれるのはデメリットでしかないですから。


しかも、かわいそうな孤児を養子として引き取ったつもりの親としては、国を介した養子縁組がまさか『拉致誘拐・及び人身売買』という犯罪的行為のおかげで成り立っているものだとは思いたくないはずです。

 

というのも、そういう設定ですから。

 

長年にわたって活動を続けてきて、多くの養子や家庭とコネを持っているはずなのに、結局、養子になった子どもも、養父母もなぜか出てこないのです。

ナンフーも会わせてほしいとは言いません。

さあ、この映画の信ぴょう性がどんどん怪しくなってきましたが、まだ真実の物語として観ることにしましょう(笑)


さて、記者が取材した貧しい村には、一卵性双生児の姉を自治体に拉致された家族がいました。
残された妹の写真を記者が自身の著書の表紙として採用したのですが、そのおかげでこの問題を知ったアメリカ人の記者が、『さらわれて養子として売られた姉』を見つけたのです!


まさに奇跡!

……なんですが、奇跡を実現したアメリカ人の記者は出てきません。

え、なんで???

真っ先に会いに行くべきでしょ?

喜んで取材に応じてくれると思いますけど……。


ということでナンフーは架空のアメリカ人記者を放置して、中国の村にいる妹に会いに行きました。
生き別れになった姉とは偶然発見したSNSのアカウントで連絡を取っているそうですが、お互いに、会うという話題や家族の話を避けているそうです。
ブロックされたら終わりの薄い関係性です。

 

え、それって本当に本人なの?

ていうか、そもそも双子の姉ってマジで存在するの?

一卵性双生児の場合、1人2役が可能なんですけど?

なんで取材しようとしないの?

もしかして、視聴者がバカかどうかを判定するリトマス試験紙なのこの映画?

 

 

エンディング


2015年におよそ30年にわたる『一人っ子政策』は廃止されました。
当然のことですが、若い働き手が少ない高齢社会を迎えています。
少ない働き手で、多くの老人を養う時代がやってくるのです。
その問題を解決するために中国共産党政府は画期的な政策を始めました。


それは『若い移民の受け入れ』ではなく『二人っ子政策』です!


うっそだろおまえwwwwwwwww
『緊急事態宣言(笑)』による外出制限と『GOTOキャンペーン(笑)』による外出推奨を繰り返すアホな国みたいなことを、数十年単位でやってるのかよwwwwww
さすが4000年の歴史を持つ国はアホなプレイのスケールが違います。
やっぱ中国にはかなわんわ……。
見事なオチでした!

 

 

仕方がない度☆☆☆☆☆


この映画に登場する加害者サイド、およびナンフーの家族の言い分には共通点があります。
第二次大戦当時、ユダヤ人の迫害・粛清・虐殺に関わったナチスの役人と同じ言い分でした。
それは「仕事だから、上からの命令だから『仕方がなかった』」です。
「仕方がない」と思っちゃうだけで、なんでもやれるんだよなぁ……。

 

 

フィクション度☆☆☆☆☆


ドキュメンタリーだからといって、事実が描かれているとは限りません。
一人っ子政策』を利用して、養護施設や自治体が拉致誘拐を行っていたということを鵜呑みにはできませんし、するべきではないでしょう。


なぜなら、この作品でインタビューしていた対象が『生育計画委員や助産師、人身売買業者』といった末端の人間だけだったからです。
養護施設や自治体、警察、そして政府への取材はゼロです。
統計としての数字もあげられていません。


あくまでインタビューした側とされた側の主観だけで、客観的なデータは皆無です。
チャイナリサーチにしても、たった2人の夫婦の主観的な活動に限られていますし、しかも営利組織です。

ぶっちゃけ、全員役者じゃないの?とすら思いました(笑)


自治体や養護施設の資料を調べようとすれば中国当局にマークされて最悪逮捕されて人生が終わるから』というのはわかりますが『委員が子どもを拉致誘拐して外国に売り飛ばしていた』という許しがたい事実(?)にたどりついたあと、なぜ元委員に再取材しなかったのでしょうか?


「おめーら国家のためとか言って子どもを拉致誘拐して金を稼いでいた悪党だろ?」と糾弾すればいいじゃないすか。
『その事実が確認できなかったからじゃないの?』と思わざるを得ません。


この映画は欧米の映画祭で評価されて賞を取ったそうですが、客観データが少ないにもかかわらず評価されたのは、悪役が中国だったからじゃないっすかね~?
『とりあえず中国を敵として描けばウケる』というスケベ根性を感じました。
ストーリーがよくできていたので映画としてはおもしろかったですけど、ドキュメンタリーとしての信用度は極度に低いとわたしは思います。

 

 

中国で最貧クラスの村の少女がなぜスマホを持っているか不思議度☆☆☆☆☆


終盤で登場した双子の妹の話なんですけど。
もう底が透けて見えますよね?

映画としては抜群におもしろかったです!