映画「イップ・マン 葉問」ネタバレあらすじ感想 けして折れぬ中国武術の誇り
2010年香港・中国映画
監督:ウィルソン・イップ
主演:ドニー・イェン
ちょっと時空がねじ曲がってるけど抜群におもしろいカンフーアクションの感想はっじまっるよ~!
目次です。好きなところから読めます。
序盤のあらすじ
1938年に日本軍とのいざこざから撃たれてしまい、故郷佛山を脱出したイップ一家は、戦争の荒波をなんとか乗り切りました。
1950年、イップは香港に移住します。
あれから12年経ったはずなのに、子どもが成長していません(!)
どうやらイップ一家はサザエさん時空に飲み込まれたようです(笑)
イップは知人の新聞社編集長のツテでビルの屋上に武館を開きますが、大都市香港では無名のため弟子がなかなかできず、家賃を払えないほど困窮しています。
ある日、地道に張り紙をして宣伝したおかげでレオンという若者がやってきます。
手合わせをして勝ったら弟子になって稽古代を払ってやる、となかなかイキがいいです。
ということで、イップはレオンをやさしくボコボコにしてやりました(笑)
するとレオンは何人も仲間を連れてきたうえに、熱心にビラ張りに励みます。
そのおかげで弟子は順調に増えて、武館らしくなっていきました。
ところが、新興武館の急拡大に目をつけられたため、ある日レオンが洪拳使いにからまれ、拉致されてしまいます。
救出のために魚市場へ向かったイップは大勢の洪拳使いに囲まれて金銭を要求されますが、これを断固拒否(そもそも払えないw)。
いきり立って襲ってくる洪拳使いたちを軽くいなしていると、懐かしい顔が現れて仲裁してくれました。
懐かしのラム師匠は野盗を率いるのをやめて香港に移住していたのです。
騒ぎを聞きつけた洪拳のホン師匠がやってきて、イップに香港では『武館会』に入らないと武館を開くことはできないと告げます。
今回のトラブルはイップがそのルールを知らなかったために起こったのでした。
イップとレオン、それからおまけにラム師匠もホンといっしょに来た刑事に傷害罪で逮捕されて牢屋にぶち込まれてしまいました。
じつはホン師匠は裏で警察とずぶずぶに癒着しており、イップが武館会に入会せざるを得ないように嫌がらせをさせているのです。
保釈されたイップは、香港のルールに従って武館会に入ることにしました。
入会して『師匠』と認められるためには会員の師匠たちと戦って勝つことが条件です。
なぜか狭いテーブルの上で戦うという中国武術独特のしきたりがあるようです。
勝利条件は『1、降参させる 2、テーブルから落とす』です。
イップは1人目の師匠を問題なくテーブルから叩き落して勝利しましたが、その師匠はテーブルで足が滑ったと主張します(笑)
今度は言い訳をさせないように、2人目はきっちり這いつくばらせて降参させてやりました。
この2戦でイップの実力に気づいた師匠連中が及び腰になってしまったため、武館会会長にして街のドンであるホン師匠自らが手合わせすることに。
ホン師匠はさすがに手ごわく、激しい戦いが繰り広げられた結果闘武場のテーブルが割れてしまったため、勝敗はつきませんでした。
イップの実力を認めたホン師匠は入会を許可するのですが、会費を求められたイップは「私腹を肥やす行為だ」と断固拒否(そもそも払えないw)するのでした。
―――ネタバレ注意!―――
ホン師匠の苦悩
武館会への入会を拒否したイップの武館はホンの弟子たちに嫌がらせを受けます。
この挑発に乗ったレオンが騒ぎを起こしてしまったせいでビルの大家さんから退去を宣告され、イップは武館を失ってしまいました。
このことに抗議するためにイップはホン師匠を訪ねて苦情を申し立てます。
ホン師匠は武館会の会費は私腹を肥やすためのものではなく、イギリス人の警察署長への上納金だと実情を明かしました。
イギリス統治下の香港では西洋人の機嫌を取らないと武館などあっという間に潰されてしまうから、香港の武術を守るためにやっているのだと主張します。
しかし相手は流儀の塊イップです。
西洋人に貢いで問題を解決するなど誇り高き中国人のやることではない、と理想論で返しました。
痛いところを突かれたホン師匠が力ずくでわからせようとしたため、再戦することに。
戦いに熱中するあまりホン師匠は自分の子どもが近づいてきたことに気づかず、危うく蹴りをいれてしまいそうになりますが、すんでのところでイップが助けました。
この出来事でホン師匠はイップの実力だけでなく、ゆるぎない信念や優しい心の持ち主だと認めます。
立ち技組手中心の詠春拳は稽古に場所を選ばないので、イップは公園で弟子たちに稽古をつけています。
そこへホン師匠がやってきて自分が運営に関わっているボクシング世界王者の試合のチケットをくれました。
世界王者ツイスターを招聘したのは武館会から上前をハネているイギリス人の警察署長で、洪拳の弟子たちはタダ働きで会場の設営や警備をやらされているのです。
仕事を休んで協力している者もいるのにタダ働きはない、とホン師匠が抗議するのですが、署長は聞く耳をもちません。
西洋人たちは言いたい放題で、ツイスターは「黄色いデブはすっこんでろ!」とホン師匠を侮辱します。
人種差別表現はともかく太りすぎなのは事実なので(笑)、ホン師匠はすごすごと引き下がりました。
仕事を休んでタダ働きさせられるほど忙しいなら、イップたちに嫌がらせをした時間はなおのこともったいないですね(笑)
中国武術の“誇り”
試合の当日、試合前のエキシビションとして各武館の弟子たちによる演武がリング上で催されます。
タダ働きさせたかわりに、せめて宣伝させてやろうという警察署長の厚意です。
しかし演武を見たツイスターが小バカにして弟子を挑発してワンパンでノシてしまいました。
「見たか!力こそがパワーだ!」
というツイスターのやんちゃな発言もあり、この暴挙は弟子たちや西洋人が入り乱れての乱闘に発展してしまい、イップたち師匠が止めに入ります。
ツイスターはなおも暴言を繰り返し、中国武術を侮辱しました。
これには今まで西洋人にヘコヘコしていたホン師匠も我慢の限界を迎え、ツイスターに謝罪を要求します。
ツイスターは謝ってほしければ勝ってみろ、とさらなる挑発に及びます。
中国武術を守るために汚れ仕事にも手を染めるほど愛の深いホン師匠は、この挑戦を受けて立ち会うことにしました。
1ラウンド目は双方一進一退というところでしたが、2ラウンド目に入るとバテはじめたホン師匠の動きが鈍くなっていきます。
この高速スタミナ消費の原因は明らかに太りすぎです(笑)
またスポーツであるボクシングと違って、中国武術は本質的に殺人術です。
ホン師匠はつい急所のノドを潰してしまいそうになり、すんでのところで止めることはできたのですが、隙をつかれてパンチをもらってしまいました。
ついにスタミナが切れたホン師匠はサンドバッグにされてしまいます。
すでにほとんど意識のないホン師匠はそれでもロープをつかんで倒れません。
なぜならホン師匠が背負っているのは中国武術の誇りなのですから。
結局、ホン師匠は死ぬまで立ち続けたのでした……。
誇りを取り戻すために
リング上で中国人がイギリス人に殺されるという事態に香港が荒れます。
穏便に統治したいイギリスの総領事が警察署長を呼びつけてただちに問題を解決するように命じました。
そこで警察署長は記者会見を開き、問題のすり替えを行うことにします。
ホン師匠は弱いくせに世界王者に無謀な挑戦をしたあげく、手加減をしているツイスターのパンチを数発もらっただけで死んでしまった、という主張を繰り広げます。
ツイスターも自分の正当性を証明するために再び中国人武術家の挑戦を受ける、などと供述するのですが、さっぱり意味がわかりません(笑)
問題視されているのは差別的な発言を繰り返す西洋人が中国人を死ぬまで殴り続けたことであって、強い弱いの話ではありません。
だが、これが力こそパワーの世界観、弱いやつに発言権などないのです!
警察署長はどう転んでもクビでしょうね(笑)
ともかくこれは盟友ホン師匠の仇を討ちたいイップにとって好都合です。
さっそくイップはツイスターに挑むために、身重の奥さんと子どもを大家さんに預け、1人で黙々と鍛錬に明け暮れます。
前回は日本人空手家と中国人武術家の威信をかけた戦いでしたが、今回はイギリス人と中国人の戦いです。
横暴な支配民族を伝統の中国武術で倒す、この熱い展開が中国人の心に響いて大ヒットにつながったんですね~。
香港に住む中国人と西洋人の代理戦争と化した異種格闘技戦が幕を開けました!
ホン師匠を倒したツイスターはさすがの強さで、イップはシリーズで初めて苦戦を強いられます。
いいパンチをくらって何度もダウンさせられ、それでもなんとかこらえていたのですが、2ラウンド終了時に事件が起こります。
明らかにゴングが鳴ったあとに、ツイスターがイップを殴ったのです。
スポーツマンなら文句を言うべきところですが、イップは武術家です。
ゴングが鳴ったからと油断して構えを解いてしまうなど武術家としてはミスもいいところ。
それほどイップは消耗しているのでしょう。
この件を受けて審判団が急遽協議に入り――なぜかイップの蹴り技が禁止されました(笑)
汚いさすが西洋人きたない!
とはいえツイスターがボクシンググローブを着用しているのに、イップが素手で蹴りもありというのは条件が偏っているといえば納得できる面もありますけど。
最初に言っとけよなw
3ラウンド目に入ってもツイスターの勢いは止まらず、イップは何度目かわからないダウンを喫してしまいます。
もうほとんど体力の残っていないイップを立ち上がらせたのは、亡きホン師匠から受け継いだ中国武術の誇りでした。
イップは亡きホン師匠の技を使ってツイスターを翻弄し、ついにぶっ倒してやりました!!!
勝利者インタビューを受けるイップは「わたしは強さを証明するために戦ったのではありません。お互いを尊重できるようになるために戦ったのです」と感動的なスピーチをしました。
これには西洋人のみなさんもバカウケ、スタンディングオベーションでイップを称えました。
イップ!イップ!イップ!イップ!
一夜にして佛山のヒーローから大香港のヒーローになったイップのもとにリー・シャオロンという子どもが弟子にしてくれと訪ねてきます。
のちのブルース・リーです!
力こそパワー!度☆☆☆☆☆
言ってることがめちゃくちゃなので、ツイスターにはもうパンチドランカーの症状が出ていると思います(笑)
即刻引退することをおすすめします!
いい悪役度☆☆☆☆☆
ツイスターの悪役っぷりがお手本のように嫌なやつだったのがよかったです。
前作の三浦閣下はフェアだったりスポーツマン精神にあふれていたり、といまいち憎み切れないキャラだったのでぶちのめされてもスカっとしませんでした。
突然蹴り技が禁止された件については、西洋人の審判団が忖度して勝手にやったことなのでツイスターに責任はないと思います。
むしろツイスターが勝ってたら「俺の力をパワーしないのか!?」とか怒ってたと思います(笑)
ホン師匠のキャラクターもよかったです。
最初は嫌なやつに見えるけど、じつは裏でみんなを守るために尽力していて、だれよりも誇り高い、なんておいしすぎるキャラです。
川井憲次度☆☆☆☆☆
攻殻機動隊で有名な川井憲次がBGMを手掛けています。
すごくよかったです。
それだけです(笑)
シリーズの他の作品の感想はこちらです。
よろしければどうぞ!