『ものがたりいちば』

映画観賞歴5000本以上なりに映画ドラマアニメの感想を書いてます。ゲーム関連はhttps://zwigani.comに移転中です。

映画『HELLO WORLD』ネタバレあり、あらすじ感想

2019年日本映画
監督:伊藤智彦
声の出演:北村匠海浜辺美波松坂桃李

人間を愛するとき重要なのは「肉体なのか、人格なのか」を問うSFアニメの感想です。

 目次です。好きなところから読めます。

 

【序盤のあらすじ】

舞台は2027年京都。
京都市に住む高校生『堅書直実(かたがきなおみ)』は、購買でどのパンを買うかを自分で決められないほど優柔不断な性格です。
クラス委員決めでも読書好きというだけで図書委員に推薦され、断ることができずに引き受けてしまいます。


望んで始めたわけではない図書委員活動でしたが、そこで一行瑠璃(いちぎょうるり)という女子と出会いました(クラスメートなので正確にはとっくに出会ってます)
瑠璃は何事も思ったことを言うマイペースな性格で、スマホを持っていません。
直実の瑠璃への第1印象は「美人だけど怖そう」です。


図書館で本を借りた帰り道、謎のヤタガラスに本を取られたので追いかけていくと伏見稲荷につきました。
すると突然、なにもない空間から若い男性が出現します。
びっくりこく直実にその男性は「自分は10年後のカタガキナオミだ」と名乗り、この世界の真実を告げました。


じつは直実の世界は量子コンピューター『アルタラ』の内部にあるデータ世界であり、現実世界にいるナオミはある目的のためにこのアルタラ世界にダイブしてきたのです。
その目的とは「直実に彼女を作る」ことです。
怪しげなマッチングアプリではありません(笑)


攻略対象はなぜか瑠璃に決まっています。
「瑠璃が好みではない」と渋る直実にナオミは本当のことを話します。
現実世界で瑠璃と付き合い始めたナオミですが、花火大会の夜に落雷が発生し、瑠璃が亡くなってしまったのです。


思い出を作ることができなかったナオミはせめてアルタラ世界で「経験するはずだった瑠璃との日々」を見たいと願い、ダイブしてきたのでした。
その話を聞いた直実はナオミの言うとおりにすることにします。
同情したというより、人からやれと言われたら断れない性格だからでしょう。


直実とナオミの目的は2つ。
1つは瑠璃の好感度を上げて付き合うこと。
そして、もう1つは3か月後の落雷から瑠璃を守ることです。

 

【ラジコン恋愛からの卒業】

さっそく直実はナオミの攻略ノートを手本にして瑠璃の好感度を上げるイベントを消化していきます。
もうナオミに言われるがままのラジコン野郎です。
攻略サイトを見ながら恋愛シミュレーションゲームをやるようなもので、あまりおもしろくなさそうです(笑)


しかし、成功するとわかっているラジコン恋愛とはいえ、瑠璃の人柄に触れるうちに直実はじょじょに惹かれていきます。
瑠璃は直実と同じく読書好きですが、直実と違って「1度決めたことを必ずやり遂げようとする」強い意志の持ち主で、「やってやりましょう」が口癖です。


ラジコン恋愛をやりつつも、落雷への対処の準備を進めます。
ナオミからもらった魔法の手袋『グッドデザイン』で、物質を創造する訓練をします。
最初はろくなものを作れませんが、訓練するうちに色んなものを瞬時に作りだすことができるようになりました。


ラジコン恋愛で瑠璃との距離を縮めていく直実に変化が起こります。
図書委員のチャリティイベントとして行われる古本市に瑠璃が大量に出品した祖父の形見の本たちが火事で燃えてしまったとき、落ちこんだ瑠璃を励ますために直実は自ら行動しました。
夜な夜な校舎に忍びこみグッドデザインで焼けた本を部分的に再現したのです。


ナオミの経験では「本は燃えたままで古本市も中止になった」ので、これは直実が初めて自分の意思で成し遂げたことです。
無事古本市が行われ、直実は瑠璃に告白し、付き合うことになりました。
1つ目の目的完遂です!
残ったのは「瑠璃の命を守る」ことです。

 

【ナオミの真の目的】

「2人で花火大会に行ったから落雷にあった」ので、とりあえず「花火大会に誘わない」ことでその事実を書き換えることにして、念のために瑠璃の家の外で見守ります。
瑠璃が亡くなる時刻が近づくと、アルタラ世界の修復システムが作動して、狐のお面をかぶった警備員みたいな連中が瑠璃を消そうと迫ります。


直実はグッドデザインの力で戦い排除していましたが、あちらはアルタラ世界のシステム権限を行使して瑠璃と直実を落雷が起こる場所にワープさせてしまいます。
しかし、直実はグッドデザインでブラックホールを生成し、雷を吸収させて瑠璃を守りました。


瑠璃と直実は幸せなキスをします。
めでたしめでたし!
うそです、まだ終わりません。


急に、瑠璃がナオミの作った檻に閉じこめられてしまいます。
ナオミが「瑠璃は死んだんじゃなくて脳死状態で生きている」と明かしました。
アルタラ世界にやってきた真の目的は「当時と同じ記憶を持ったデータを作り、それを脳死状態の瑠璃に書きこむことで目覚めさせる」ことだったのです。


どうやらアルタラ世界のデータはコピーができないようなので、瑠璃は上空に飛んで行って消えてしまいました。
もうアルタラ世界に用がなくなったナオミは現実世界に戻り、目覚めた瑠璃と10年ぶりの再会を果たします。


ナオミは瑠璃ともう1度会うために、10年間すべてを捧げてきたのです。
アルタラ世界にダイブするために自分の体で実験を続けたせいで、左足が麻痺する大怪我まで負いました。
しかし尊い犠牲のおかげでついに瑠璃と再会できたのです。
めでたしめでたし!
うそです、まだ終わりません。

 

【崩壊する2つのアルタラ世界】

瑠璃がいなくなった直実のアルタラ世界ではシステムエラーが起こり、過剰に作動した修復システムのせいで世界が崩壊していきます。
直実はなす術もなく修復システムから逃げ回りますが、そのとき「瑠璃が吸い込まれた上空に行けば自分も同じところに行けるのではないか」と思いつきました。
一か八か、直実は上空にダイブします。


すると神社みたいなところにワープして、そこでヤタガラス(グッドデザイン)と再会しました。
ヤタガラスは「私はあなたの味方です」としゃべり始めて、直実にふたたびグッドデザインの力を与えてくれます。
直実はグッドデザインの力で瑠璃とナオミのいる現実世界にワープしました。


さて、データ上の人物が現実世界に出てこれるわけがありません。
というわけでナオミが現実世界だと思っている場所もじつはべつのアルタラ世界だったのです。
さらに、目覚めた瑠璃も「ナオミが知る瑠璃」ではなく、「直実と思い出を作ってきた瑠璃」なので「堅書くんじゃない」とナオミは拒絶されてしまいます。


瑠璃を取り戻すためにワープしてきたのはいいのですが、このナオミのアルタラ世界でも瑠璃は異物として認識され、修正システムに狙われたため、直実は瑠璃を連れて逃げました。


ヤタガラスが「京都駅の大階段に世界の出口を作る」というので2人は向かいます。
修正システムの執拗な追跡に追いつめられたとき、反省したナオミが車で駆けつけました。


京都駅につくとまず瑠璃を送り返しましたが、過剰作動した修復システムが巨大化して、ワープゲートを壊されてしまいます。
直実がグッドデザインで排除しようとしますが、無限に増殖するシステムには歯が立ちません。
するとナオミが「俺を消せ」と言いだします。


なぜなら、システムは直実とナオミという同一人物が2人存在するから修正しようと動いているので、どちらか片方がいなくなれば止まるはずだからです。
直実はこの自己犠牲の申し出を拒否します。
目的はともあれ、ナオミと過ごした3か月の思い出もまた直実にとって大切なものだからでしょう。


しかし、修正システムに襲われた直実をかばってナオミが致命傷を負ってしまいます。
直実は泣く泣くナオミを消し、元の世界に戻るのでした。
苦い結末になりましたが、ともかく直実は瑠璃と再会し、2人は幸せなキスをして終わりです。


めでたしめでたし!
うそです、まだ終わりません。


突然、直実(ウィキペディアにはナオミと書いてありました)は研究所で目覚めます。
目の前には喜ぶ大勢の科学者たち、そして大人になった瑠璃がいました。


じつは本当の現実世界で昏睡状態に陥っていたのは瑠璃ではなく直実で、アルタラ世界での騒動はすべて直実の器に記憶を合わせるために瑠璃が行ったことだったのです。
ヤタガラスも瑠璃です。


何年ぶりだかわかりません(ウィキペディアには20年ぶりと書いてありました)が、直実と再会した瑠璃は「やってやりました!」と喜び、2人は幸せなキスをします。
なんだかよくわかりませんが研究所は月面にあるようです。
低重力下である必要があったのかな?ぜんぜんわかりません。


ともかく直実もナオミも幸せになったのです。
というところで、今度こそ本当に終わりです。
めでたしめでたし!

 

【まとめ】

オチがおもしろかった度☆☆☆☆☆
なんで月なのかわかりませんけど(笑)
月面で寝た切りだと筋肉や心肺機能が弱りまくってやばそうです。

 

テンポよかった度☆☆☆☆☆
さくさく進んで飽きが来ませんでした。
グッドデザイン!

 

なるほ度☆☆☆☆☆
「優柔不断で意志の弱い直実が急に覚醒して10年も困難に挑みつづけて見事成し遂げた」のではなく、「もともと強固な意志力の持ち主である瑠璃が成し遂げた」というストーリーは納得性が高いと思いました。

 

おもしろかったです、グッドデザイン!
以上です。