『ものがたりいちば』

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「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」の感想

意味不明なタイトルで損してる系のやつ。

 

 (2020/12/1現在、Amazonプライムビデオで視聴可能です)

 

 

2018年日本映画。実話をもとにしたストーリー。
監督は前田哲。
主演は大泉洋高畑充希三浦春馬などが出演。


筋ジストロフィーの患者が、介護ボランティアとの交流を通じて人生を強く生き抜く話です。
このタイトルで上記の内容を想像できたらエスパーです!
むしろある程度のネタバレがないと観る気にならないでしょう。
というわけで、ぜひ途中まで読んでいってください!(露骨な宣伝)

 

・序盤のかんたんなあらすじ
1994年。

北海道大学の医学部に通う田中(三浦春馬)を恋人にもつ美咲(高畑充希)は、ひょんなことから田中と同じボランティア活動に参加することになった。

 

筋ジストロフィー患者の鹿野(大泉洋)の在宅介護ボランティアである。
ボランティアにまったく興味のなかった美咲だが、鹿野に気に入られてしまい、恋人の田中との関係も考えてしぶしぶ承諾する。


ところが、鹿野はわがまま放題のモンスター障がい者だった!

 

たとえば。
寝返りを自力でできないことを盾にして、昼間のシフトをこなしたスタッフにそのまま連続で泊りのシフトを強要。

 

昼食用に買ってこさせたハンバーガーのメニューが違うと辛辣な言葉を浴びせる。

 

夜中に思いつきでバナナを買いに行かせる(タイトル回収)。

 

エロ本を買いに行かせる。

 

オナ〇ーにつき合わせる。

などなどわがまま放題というか、これが仕事だったらパワハラセクハラで訴えられかねない暴挙。

 

とはいえ時は古代、1994年。

パワハラセクハラが野放しの時代。


本来なら入院していなければいけないほど鹿野の病状は進行しているので、24時間体制でつねに誰かが介護しなければいけない。


おかげで美咲と田中はろくにデートもできないほどで、他のスタッフも多かれ少なかれプライベートを犠牲にしていた。


スタッフの犠牲を知りつつもわがまま放題の鹿野に、ついに美咲は「なに様だよ!?」とキレてしまう。


しかし、鹿野のわがままには信念があったのだ。


それを知った美咲は自分の考えを改めて、鹿野に人として惹かれていく。
二人の距離の接近を見た田中は複雑な心境になり、美咲との関係がぎくしゃくしまう。
その間も鹿野の病状は悪化していくのだった……。

 

 

――いちおうネタバレアラート――

 

 

映画のタイトルって文字数制限あるの?☆☆☆☆☆
この映画はノンフィクション小説が原作です。
そのタイトルは「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」。
これなら一発で内容がわかりますよね。

 

障がい者やボランティアに関心のあるひとを呼びこめるわかりやすいタイトルだと思います。
もし長すぎるってことを懸念したのなら、削るのは「こんな夜更けにバナナかよ」の部分でしょう……?


原作は未読なので知りませんが、本作で夜更けバナナのエピソードはそんなに大きな要素じゃありません。鹿野のわがままエピソードのひとつに過ぎません。

そのあとバナナネタはでてきませんし。


管理人は前々からこの映画の存在を知っていましたが、てきとうにつくった悪ふざけコメディかなんかだと思って無視してましたよ。


愛しき実話、というほぼ無意味なワードでは情報の補強にもなるとは思えないです。
過激路線なら「モンスター障がい者」とか「筋ジスわがまま野郎にパシらされてるんだが?」とか、穏便路線なら「余命マイナス14歳の筋ジス患者と恋をした」とかなんかもうちょっとわかりやすいタイトルあったんじゃないかと。

 

まあ、最後のは嘘になっちゃいますけど。

え、おまえのタイトルセンスどうかしてるよ?

知ってんよ!


障がい者ものじゃ売れなさそう……と思ってタイトルを改変したのか、どうしてもバナナにこだわりたかったのか、よくわかりませんけど、誰も得しないタイトル改変だと思います。


ちなみに映画タイトルに文字数制限があるかどうかは確認できませんでしたが、こんなのがあります。


もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」
「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」


こっちの原作のほうが短いんですけどっ!文字数制限なさそーです。
あと、日本語字幕の文字制限は1秒につき4文字だそうです。

これ豆知識なっ!

 

 

1994年という舞台の重要性☆☆☆☆☆
インターネットどころか携帯すら普及していない古代世界なので、基本的に連絡は固定電話オンリーです。
鹿野や美咲、田中といったボランティアメンバーがすれちがう大きな原因です。

 

連絡が取れない場合、相手がいるであろう場所に直接出向くしかなかったのです。
さらに車いすでしか行動できない鹿野にとって、不便極まりない世界でもありました。
その時代、駅のエレベーター設置率は低く、車いす使用者は誰かの助けを得なければ階段を上れませんでした。


劇中で鹿野は車いす対応のトイレにたどり着けずうんこを漏らしてしまいます。

まさに大不便時代(激ウマギャグ)。


1998年に乙武洋匡の「五体不満足」が出版され、メガヒット、バリアフリーの重要性が世間に理解されるようになりました。

乙武洋匡の入学にあたって、早稲田大学は多額の費用をかけてキャンパスの多くの階段にスロープを設置するという大改修を行ったそうです。

それが革命的と称賛された時代と本作の舞台は同じ時期です。
あまりそのへんの不便描写はありませんでしたが、ボランティアメンバーの苦労がうかがい知れます。


障がい者が今よりもずっと他人に迷惑をかけなければ生活できなかった時代に病院生活ではなく在宅介護を望み、介護者に対しても卑屈にへりくだるのではなく、自分のやりたいことを押し通した鹿野という人物の強い心は一見の価値があります。


ただ、メイクとかファッションが1994年っぽくないと思いました。

まあ管理人は14歳の美少女なのでそんな古代のことはあまり知らないんですけど!

 

 

 

きっかけや動機がよくわからない度☆☆☆☆★
あまり出番のないボランティアスタッフたちがわがままな鹿野に献身的に接する理由や動機がわかりません。


美咲をめぐる三角関係が発生するのですが、美咲のどこにそんな魅力があるのかもよくわかりませんでした。


このへん、劇的なきっかけを作れない実話ものの弱さなのかな、と思いました。

どういうひとにおすすめすればいいのか、かなり迷う作品ですが、わたしは興味深く観れました。