『ものがたりいちば』

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映画「残酷で異常」の感想

全体的にユニークなループもの。題名が映画っぽくないのもユニークですね。


たぶんちがう題名にしたほうがよかったと思うんですけど……。
ネタバレ指数は低めです。憲法違反とまではいきません。

 

Wikipediaに個別の記事がありません。
なので、監督とか出演者とかのデータは割愛させていただきます。

ちゃんと調べるのめんどくさ、じゃなくて不正確なデータを書くのは良心にもとる行為だからです。


じゃあWikipedia丸写しはどうやねん!?

……ごめんなさい。


手抜きのいいわけをしている流れで、偶然なんですけど、本作のテーマも「良心」です。

 

2014年カナダ映画(らしいです)。監督、主演、わかりませぇん。勝手に調べてください!

 

 

・ちょう簡単なあらすじ解説(序盤のみ)
夜間学校教師のエドガーが、自宅のバスルームで心停止した妻のメイリンを蘇生させようと心マッサージをやっています。


ですが、メイリンの意識は戻りません。死亡が確定してしまいます。


病気の発作でしょうか、エドガーは自分もその横に倒れて、目を見開いたまま意識を失ってしまいます。死亡したように見えます。


その次の瞬間、エドガーは車を運転しています。


助手席にはメイリンがいます。家に帰る途中のようです。
おまえなに書いてんの?と思われるかもしれませんが、マジでこの流れです。いっしょに混乱しましょう!


運転中のエドガーにメイリンの息子のゴーガンが学校で同級生の鼻をへし折ったという知らせが来ます。


家に帰ったエドガーはおもむろ芝刈りをはじめます。

え、なんで?

ゴーガン迎えに行ったりなさらないの?

しません!


そんでメイリンが作った夕飯を食べます。ちなみに毒入りです。


シーンがとびとびでわけわからん?
そうですね。

ご安心ください。

そういうふうに作ってあるのです。


補足情報ですが、エドガーは冴えない中年の白人です。
メイリンと息子のゴーガンはアジア系なのかな?

ゴーガンは連れ子なので、エドガーと血縁はありません。


そして、メイリンは貧乏外国人だったので、息子をいい環境で育てるためにエドガーと結婚したようです。

 

裕福な先進国のモテない男性が、貧しい国の美人女性と結婚するという例は人類の歴史上よくあります。
今でもよくあるんじゃないのかな~?


エドガーは突然気分がわるくなります。

毒もられましたからね。


メイリンが救急車を呼びました。

というか、そのフリをしました。


次のシーンでは、エドガーがバスルームでメイリンから電話を奪おうとしています。
メイリンから電話を奪ったエドガーですが、メイリンが息をしていないことに気づきます。


エドガーは心肺蘇生術を施そうとしますが、自分も息絶えてしまいます。
冒頭のシーンに戻ったんですね。


気がつくとエドガーは、学校か研究施設みたいな謎の建物の廊下に立っていたのです。
廊下を歩いていくと、広い部屋に到達します。


そこでは数十人がグループセラピーみたいなことをやっています。
その連中は殺人の告白を始めたのでした。


なぜ?
エドガーは死んだはずでは?


というところがカオスに満ちた導入です。

 

 

――ネタバレ注意!――

 

 

 

薬物中毒者やアルコール依存症を題材にした映像作品は、アンフェアな構造をしていることが多いです。


視点人物者の記憶が曖昧で、ラリってるときの妄想なのか(つまり嘘)、実際にあった出来事なのか、視聴者に判別できないので、推理や理解を拒否するのです。


「わかるわけねーだろ!」ものです。


かんたんに言うと、夢オチ妄想オチ連発でどれが現実かわかんないので、イラつくのです。
はい、わたしは大嫌いです。


でも、アンフェア構造に気づく途中までは謎めいていて面白いんですよね……。
本作の基本構造も同様です。


1から10まで順番通りに描けば、「エドガーがなぜ妻を殺すに至ったか」という流れを描いただけになっちゃって、おもしろい物語にはなりません。

ただの報告書になってしまいます。


なので、場面場面のつながりをを意図的に隠し、情報を制限し、順番をバラバラに小出しにすることでサスペンスにしていく、という手法をとっています。


場面を適当に切り刻んでランダムにならべていく「カットアップ」という技法が20世紀にちょっと流行ったらしいのですが、その流れを汲んだストーリーテリングでしょう。


視聴者がイラつくので現代の大作ではやりません。

基本的に順番通りにやります。

意味もなく時系列をいじるのはやめましょう。

やめて!オナシャス!


それをやってよいのはループものやタイムリープものです。
管理人も大好きなジャンルなんですけど、順序を整理してネタバレあらすじを書くと3行くらいで終わっちゃうので、解説がやりづらいやつです!


同様の手法は「メメント」「レクイエム・フォー・ドリーム」「アレックス」などもやっています。どれも名作の評価を得ていますね。

興味があったら見てみてください。

めちゃくちゃ気が滅入ることは保証です。


さてエドガーは冒頭で死亡したようです。
グループセラピーの参加者はほぼ全員殺人者のようです。犯した罪の告白をしています。

やべえ集会ですね。


ですが、エドガーは人殺しではありません。

妻が死んだのは、事故です。

というか、事故だと主張します。


セラピーが終わって部屋から出ると、また妻と自宅に帰る自動車内にワープします。
ループです。


どういうことかというと、セラピーの参加者は全員が人殺しで罪の告白をしたあと、また自分が人殺しをする場面に戻っていくのです。

そして、セラピールームで反省するのです。

何度も。


もう後悔している。

反省している。

あんなことやらなければよかった。

 

殺したくないのに、何度も殺害場面をやり直しさせられる……。
これもう地獄でしょ……。


タイトルは秀逸です。

まさに「残酷で異常」。

すっげー売れなさそうなタイトルだけど。


グループセラピーをやらせている連中は神サイドの関係者と思われます(天使かな?閻魔大王かな?)。


罪人を悔い改めさせるために開催しているセラピーに終わりはありません。

無間地獄です。


何度かループを繰り返すうちに明らかになるのですが、エドガーはばっちりメイリンを殺意をもって殺したのです。


でも、エドガーとしてはメイリンを愛していたし、そもそもなぜ体調が悪くなって死んだかというと、メイリンに毒をもられたからです。


なので、何回かループして真相を思い出したエドガーはメイリンを殺人者として告発します。
でも神様サイドのひとは認めてくれません。

 

なぜなら、メイリンが死んだ時点ではエドガーはかろうじて生きていたからです。

だからメイリンは人殺しではない、と。


どうやら、この神様は死亡した時点で罪を確定するようです。

ちなみにこの設定はのちのち破綻します(!?)。


グループセラピーのなかに、エドガーと同じく異色の存在がいます。
ドロシーという女性です。


体の線が出るニットのセーターにミニスカートという男の子が大好きなファッションです。わたしも超好きです。

どうやら70年代に流行したファッションのようです。


セラピーに集められた人物は時代がバラバラのようです。
人殺しの集会セラピーにいるということは、彼女も人殺しなのでしょう。
ではドロシーは誰を殺したのでしょうか?


自分でした~!

 

キリスト教では、自殺はとても思い罪なのです。
永遠にループするグループセラピーに抗おうとしているのは、エドガーとドロシーだけです。


そこでエドガーはドロシーを自分のループに引きこもうとします。
なぜなら、殺人のループに変化を与えられるのは、他人だけだからです。

もしかしたら、運命を変えられるかもしれないからです。


さあどうなる!?
あ、ほかの登場人物はどうでもいいです。

場つなぎの空気です。

 

 

字幕のユニーク度☆☆☆☆☆
ちょっと上の文章に誤字があります。
キリスト教では自殺は「思い罪」なのです。


管理人の誤字じゃなくて、字幕に忠実に表記しました。

はーい、誤字警察のひとーざんねーん!帰って!どうぞ!


これはただの誤植の揚げ足を取っただけですが、それだけじゃなくて、字幕の雰囲気が全体的になんか、わかりにくくてユニークです。


あんまりチェックが入ってない感じしました。
とくにメイリンのことを「貧しい国から買ってきた女」と表現していたのは、めちゃくちゃ混乱しました。


SFっぽい設定だから、奴隷制が廃止されなかった世界線アメリカの話かと勘違いしました。
字幕の罪は思いで!

 

 

ただのループものでは終わらない度☆☆☆★★
中盤あたりでエドガーはループの脱出方法を探します。
そうですそうです!
ループものは、そこから脱出するのが命題ですから!


それで、セラピー仲間のドロシーを自分のループ世界に引き込んで運命を変えようとするのです。
その試みはうまくいきかけます。やったね!


ただですねえ……そのとき、エドガーはあることに気づくのです。
自分はすでにメイリンに毒をもられている。


ということは――メイリンを殺さなければ、自分が死に、メイリンが殺人者としてこの無限ループ地獄に送られることになる、と。


エドガーは、カッとなって殺してしまったとはいえ、メイリンのことをちゃんと愛していたのです。
死よりも恐ろしい運命をメイリンに背負わせることは絶対に避けたい。


ほんで、画期的な方法を思いつきます。


それはドロシーのループ世界に自分が介入することだったのです。
ちなみに、ドロシーは自殺者です。だれも殺してません。


彼女のいちばんの罪は「拷問したこと」だそうです。

だれをどのように拷問したのでしょう?


生前のドロシー(1972年没)は、重度のアルコール依存症でシラフではベッドから起きることすらできなかったようです。

 

その苦しみから逃れるためにかわいい娘たちや夫を捨てて自宅の庭の木で首つり自殺します。
そして母親の死体を見た幼い娘は、自分のせいだと思い込み、ひどく傷つきます。


それが「拷問」の罪だそうです。


はい。

先ほど書いたように、設定が破綻しました。

「死んだ時点で罪が決定する」という設定はどうでもよくなったようです。

 

この世界線の神様はルール運営がガバガバなようです。

神様も低予算には勝てないからでしょうか?


こはちょっと、ていうか、ぜんぜん納得いきませんでしたが、エドガーはめげません!


エドガーは、ドロシーの世界にいって彼女の自殺を止めます。
そんで、ドロシーが自殺するために用意したロープで首を吊ります。


なぜなら、エドガーにとって、愛するメイリンを殺さずに、しかも殺人者としての地獄のループ世界送りから救うためには、自分が毒で死んではならないからです。

解決手段はすみやかなる自殺、しかありませんでした。


それに、地獄のセラピールームで唯一自分を気にかけてくれたドロシーを救うためでもありました。


結果として、2人の女性が救われることになります。
ドロシーとメイリンです。


メイリンは死の運命から、ドロシーは地獄のループから、脱出できたのです。
結末は涙なしでは見られません、でしょう?


どうぞご自分の目と耳で確認してください!
90分です。気軽に見れます。

 

 

やっぱずるいと思う度☆☆☆☆★
ガール・オン・ザ・トレイン」という作品があるのですが、主人公は重度のアルコール依存症です。


主演のエミリー・ブラントは「プラダを着た悪魔」「オール・ユー・ニード・キル」などのヒット作に出演しています。

管理人が大好きな女優です。

まじかわいい。演技うまい。


ストーリーは「べろべろに酔っぱらってる女性が電車に乗ってるときに殺人を目撃したっぽいんだけど、記憶がとびとびで曖昧でー現実かどうかよくわかんなぁい」という例の卑怯な手法です。


批判じゃないですよ!

この映画は好きですよ!


たしかに情報の正確性を曖昧にするのはアンフェアですけど、それが無条件に悪いわけじゃありません。

おもしろさにつながっていれば問題ないでしょう。


ちなみに管理人はアンフェアなのは嫌いですけど、でも、きれいに騙されたときはマジで歓喜します。


あと「ガール・オン・ザ・トレイン」に出ているヘイリー・ベネットという女優もめちゃくちゃ好きです。


あれ?
これ、もしかして……。


エミリー・ブラントもヘイリー・ベネットも出てなければ、ただの卑怯な映画だと思っちゃったかもしれない……?
ま、まあ……。
えっと。


「ずるい」と「うまい」って紙一重ですよね、たぶん。
「残酷で異常」はどちらかというと、ずるい寄りだと思います!


そんでも制作側はそういう批判がくるのはわかっていてやっていると思うので、その意欲をくじくような不当な評価はしたくないです。


管理人はこの映画、ループものが好きな方には自信をもっておすすめできます。
ただ、この邦題つけた方、売る気なかったんじゃない?


自分からは以上です!